第24話 元聖女の膝枕と無自覚プロポーズ

「今日はキャベツの煮込みとかどうかしら?」

「おお、レイドとアクシアちゃんか、一緒に買い物とは相変わらず熱いねぇ」

「そんなんじゃない、俺は主としてこいつを監視しているだけで……」

「はいはい、おまけしておくねー」



 ゾットとの戦いの前のデートを知り合いの商人にもみられていたからか、こんなふうにからかわれることも増えてきたものだ。

 しかも、俺とアクシアもつい顔を赤らめてしまうものだから、それに拍車をかけているのかもしれない。

 仕方ないだろ、こんな美少女とカップル扱いされているんだぞ!!



「「……」」



 少し気恥ずかしい思いをしながらも、悪くないと思いながら一緒に歩く俺とアクシア。

 家につくと、ようやく料理が一人でもできるようになったアクシアが鼻歌をうたいながら鍋をかき回す。



「いい匂いだ……それにしても平和だな……」



 ゾットの件がおちついたこともあり、俺たちは平穏な日々を過ごしていた。仕事で色々なものをリペアしてお金を稼いで、アクシアやアグネスと美味しいものを食べたりする。実に素晴らしいスローライフである。

 だけど、このままでいいのだろうか……俺はアクシアとどうなりたいんだろうか? もちろんだが、俺たちの関係はかけらもすすんでいない。



「ねえ、レイドちょっといいかしら?」

「うお? いったいどうしたんだ? 料理は?」



 いつの間にか真横にいたアクシアに驚きつつも不安そうにキッチンの方を見つめるとアクシアがその豊かな胸を張って答える。



「今は弱火でぐつぐつ似ている時間だから大丈夫よ」

「え? 本当でござるかぁ?」

「……確かに昔はへたくそだったかもしれないけど、最近は失敗しないもの。時々しか……」



 ジトーっとした目ですねるアクシア。

 そういや、いまだに新しい料理に挑戦するとやべえ失敗をするんだよな。この前のカレーとやらはやたらと辛かったから二人して泣きながら一口食べた後にリペアしたものだ。

 


「その……私もあなたの奴隷として結構慣れてきたから新しいお仕事をしようと思って……」

「あー、でも掃除と料理に洗濯もしてもらってるしなぁ……これ以上は……」



 エッチなことくらいしか思いつかないな……俺好みのメイド服を着ているアクシアに思わずよこしまな目を向けてしまいそうになる。



「そんなに物欲しそうに人の胸を見ないでほしいのだけれど」

「気づいてんのかよ!! いや、つい見てしまうというかだな……」

「まあいいわ。それよりも新しい仕事なのだけれど……ここに横になってくれないかしら?」

「は?」



 俺が間の抜けた声を上げるのも無理はないだろう。なぜならば彼女がぽんぽんと手を叩いたのは俺の横に座る自分の膝だったのだから。



「その……男の人って膝枕されながら耳かきをされると嬉しいんでしょう? とある本に書いてあったわ」



 多分禁書と言う名のエロ本ですね。 



「そりゃあ、嬉しいが……いいのか?」

「良いから言っているのよ。そのあまり気持ちよくはないかもしれないけれど……」

「いや、ありがとうございます!!」



 禁書グッジョブ!! とか心の中でお礼を言いながらアクシアの膝の上に頭をのせる。

 うおおおおお。柔らかい感触と暖かさが心地いいな!! てか、ふっと!! 流石は太ももだぜ!!



「あまり太いとか言われると傷つくのだけれど……」

「え、声に出てた?」

「ええ、ばっちりとね」



 不満そうに頬を膨らませながらも耳かきを俺の耳元に運ぶアクシア。その姿があまりにも可愛らしいものだから下らない軽口をたたく。



「ふっ、太ももとは太いももの事だぞ。むしろ最高の誉め言葉だと感謝しろ」

「……今、生殺与奪の権を握っているのは誰だかわかる? ご主人様?」

「調子に乗りましたぁぁぁ!!」

「わかればいいのよ」



 彼女の耳かきを持つ手に殺気が籠ったのを悟った俺はあっさりと降参する。あれ、一応俺が主人なのに負けている気がするぞ……



「じゃあ、始めるわね……って無茶苦茶綺麗なんだけど!? なにこれ、逆に怖い!!」

「あー、そうだ。自分の身体をリペアした時に余計なものは出さないようにしたんだった。何だったらゴミだらけの耳にリペアしようか?」

「いえ、それはキモイからやめましょう」



 ひどい言いようである。そして、アクシアは耳かきができなかったのが不満そうに頬を膨らましている。



「じゃあ、どうするんだ……?」

「そうね……じゃあ、こういうのはどうかしら?」



 頭をゆっくりと優しくなでられる。なんだろう、くすぐったい感触と彼女の体温が凄い心地よい。



「昔、孤児院のシスターにこうしてもらうとすっごく嬉しかったの。どうかしら?」

「ああ、何だろうリラックスする」

「そう……じゃあ、こういうのもどうかしら」

「うお!?」



 イタズラっぽく笑うアクシアがゆっくりと優しく頭を撫でたりマッサージするように軽く頭をもみほぐしてくる。



「なんだか幸せだな……結婚とかしたらこんな感じなのかな」

「……」



 柔らかい太ももと気持ちの良いマッサージのセットでなんとも幸せで気が緩んだからか、思わずぽろっと言葉が出てしまったが、返事もないし幸いにも聞かれていなかったようだ。

 ほっと安堵の吐息をもらしながら俺は話題を変えようとして……



「そういえばそろそろスープが……」

「ごめんなさい、今は顔を見ないで……」



 見上げるとそこにはかつてないほど顔を真っ赤にしたアクシアがさっと手で顔を隠す。今の聞かれていたのか……

 しかも、何だこの反応は……?



 

 まるで彼女も同じようなことを想って、嬉しそうにしているじゃないか……。だが、もしもだ。俺たちが結ばれるとしたら、一つの大きなハードルがある。

 彼女が聖女としての力を取り戻したからこそのハードル……そう、『聖女は聖剣の持ち主と結ばれることで、互いの力を最大限に引き出せる』という、教会の掟だ。

 力を取り戻した彼女が俺なんかの隣にいて、本当に良いのだろうか?



「なあ、アクシア……」

「な、なにかしら、レイド?」



 彼女の反応の意図を聞こうとした時だった。扉がノックもなく開けられて聞きなれた声が響く。



「やあやあ、レイドにアクシア、面白い依頼をもってきたんだ。一緒にうけてもらおうじゃないか……って、なんで二人とも顔が赤いんだい?」



 とっさに離れた俺達だったが、顔の赤さまではごまかせない。結局、アグネスには不審がられ、放置されていたスープは焦げてしまうのだった。





★★★



もう、夫婦では……?

アグネスがどんな仕事を持ってきたのか? お楽しみに




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