主人公の志騎とサクラが出会う冒頭から圧倒的に洗練された描写の数々に心を踊らされ、胸をギュッと鷲掴みにされた想いで拝読。
登場人物一人一人の行動、視線、呼吸、間の細部に至るまで、美しく緻密な描写が駆け回り、物語を構成しております。
私が印象に残っている場面ですが、
冒頭で最悪の未来を見たサクラと出会う志騎の場面は、特に印象的に残っており、志騎本人の格好良さが際立つような描写、台詞配分が秀逸です。
舞台は北海道、ススキノなど、その地形を意識した描写だけに拝読していて、頭の中で容易に連想出来る。
是非、一度拝読してみて頂きたい限りでございます。
まるで一つの舞台演劇を最後まで観劇したような、圧倒的な余韻に浸れる作品。
場面が変わるたびに、照明が落ちる。
次の瞬間には、別の場所、別の表情、別の運命が照らし出される。
そんな幕間の美しさに、どんどん惹き込まれます。
印象的なのは、登場人物たちの立ち姿。
台詞だけではなく、沈黙や間、視線の置き方にまで意味を持たせています。
それぞれが舞台の上で自分の役割を背負い、宿命という脚本に抗おうとしているよう。
そして、場面転換のたびに物語の温度が変わるところも魅力の一つ。
静かな会話の場面では息を潜めるような緊張があり、戦いの場面では一気に幕が上がるような迫力がある。
また、日常の場面では、その年齢の等身大の男女が描かれ、その緩急がとても映像的で、同時に演劇的でもありました。
読後には、舞台の幕が下りたあともしばらく席を立てないような感覚を与えてくれる、美しく、切なく、重厚な宿命のSFファンタジーです。
我々が知る北海道と、ここに描き出された北海道。
それはもはや地名の概念や先入観、イメージを超え、この現実世界がパラレルで進行しているかのような錯覚をもたらされる感覚を受けました。
第1章の一文目から、襟首を掴まれたようにグッと引き込まれ、まったく新たな北海道の風景に迎えられて、早々に躍動感溢れる場面に遭遇する。
この物語には哀しさや美しさ、喪失感などあらゆる要素が混じり合ってますが、その中でも個人的に惹かれたのは、シーンに吸い寄せられるほどの筆力で描かれる圧倒的なパワーでした。
旧日本のifの世界に魔法が登場するなど、どんな物語としても読めるカラフルな器がある作品です。
読書が好きな人であれば、必ずどこかでジーンと響く場面に遭遇することができるでしょう
七重奏、七重奏だが、これは同時に、美しいオペラだ。舞台は、冷戦ifの北海道。一度、北方の国に下った私たちとは違う世界線。そこに、自らの死の未来を見た銀髪の少女と、その絶対死の運命から救おうとする英雄がいる。こんなにも悲しいゴシックファンタジーは、そう多くない。美しいけれど滅びや死の気配を帯びたその世界で、雪と血、祈りと悪夢、そして束の間のぬくもりが幾重にも重なり合い、物語は静かに、しかし確かに心を締めつけてくる。張りつめた運命の中で交わされる眼差しや手のぬくもりがあまりにも美しく、だからこそ、その先に待つかもしれない喪失の気配が、ひどく切ない。