元々、三国志では魏に関心が向きがちで、呉についてはあまり深く考えてきませんでした。
けれどその分、英雄として語られる前の彼らの姿に惹き込まれ、味わい深く読ませていただきました。
特に孫策はどうしても『小覇王』としてのイメージが先行しがちですが、このお話の中にいるのは父を失い、自信を失って、それでも強くあらねばならない十五歳の少年でした。
また、人と人との間にある柔らかな感情が、高い解像度で描かれています。
個人的に「寂しい」という気持ちを認めることには、案外エネルギーが要るものだと思います。
誰かを想う気持ち、寂しいという気持ちを抱えながら、それを素直に認めきれずに別の理由を作ってしまう心の動きが、非常にリアルに感じました。
水や風、月といった自然描写も単なる背景として扱わず、その時々の人物の心そのものとして描かれており、美しい余韻が残りました。
これまであまり意識してこなかった人物たちの魅力を知り、愛おしく感じるきっかけとなり、感謝しております。