第5話 恋仲
幾度かの季節が巡り、春。
桜の花びらが風に舞い落ちる。そこかしこで薄桃色の景色が広がっていた。
茶屋の近くの桜の木の下で
「
「本当はかんざしが良かったんだけど、金なくて。神社のお守りなんだけど」
「かわいい! 桜の形。
二人の間には温かい感情が芽生えていた。
屋敷に帰った
「ねえ、かわいいでしょ!
「ほう、いいじゃねえか。これに括りつけて帯に刺したらどうだ?」
「これ、何?」
「オレが使っている耳かきの棒だ」
「…………きったな―――い!
「何が汚ねえだ。まったくよ。かまど、その串かしな」
「……ありがと、
揺れる桜を見ながら
少女の顔がほんの少し大人びて見える。
ある朝、
「ねえ、かまど。おにぎりの作り方、教えて」
「
「………何で分かるの?」
「そりゃあ、まあ……。うふふふ」
かまどが嬉しそうに笑う。
「じゃあ、手に塩を少し、水で手のひら全体に……。優しく握って……」
「……ん? あれ? 三角にならないよ?」
「ふふふ、ゆっくりでいいですよ」
「あ――だめ! ねえ、かまどが握ったの包んで。私のは自分用に持って行く!」
両手に米粒をベタベタとくっつけて
時間切れとばかりに
二人で共に生きていくことを誓い合っていた。
一緒に生活できることを夢見ていた。
いつか三人で生活したいと願っていた。
二人のまだ幼い恋は少しずつ、それでも新芽が芽吹くように確実に育まれていった。
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