第13話 パーティーには乱入者がつきもの(エリス視点)
いつ来たのか。いつから居たのか。誰にもわからなかったようです。
「イゾルテ!イゾルテがいるわ!」
混乱したような叫ぶ声がパーティー会場に響く。ガシャンッとなにかが倒れる音、バタバタコツコツとした足音。テーブルクロスにすれる服の音。
まさかこんなところにまで来るなんて驚きました。
恐る恐る私は顔を出してみます。テテテテテッと小走りでこの騒動にのっかって、大胆にも前の方へ移動します……アル様が心配なので、いる方向へ走ります。
手頃なところで花瓶の台を発見したので、その後ろに隠れます。ここからはアル様の後ろ姿が見えます。だいぶ近づけましたね。
場は混乱しており、イゾルテという名を聞いただけで、恐ろしいと言わんばかりに皆が動揺しているので、小さな私がちょろちょろと動きまわっても誰も気づかないようです。私もイゾルテが怖いのですが……どうやら好奇心の方が勝つ性分のようです。
「陛下はこちらへ!」
警備兵が慌てて別室へ陛下を移動させ、安全を確保しています。ジャスティン様、アルフレッド様もこちらです!と呼びかけ、まず王族を避難させようとしていますが、アル様だけは応じないようです。首を振ってオレにかまうなと言っています。
「オレはいいから皆を避難させてくれ……どうやらオレに用があるようだ」
そう低い声で言うアル様。その視線の先には幻影らしく体が透けているドレスを着ているイゾルテがいます。燃えるような鮮やかな赤毛が目にまぶしく感じます。
アル様に向かって、ニイイイイッと唇を横一線にし、笑いかける表情はどこか残酷な笑みにも見えて、私は背筋が寒くなります。
「よーーーくわかってるじゃないの。しかもあたしから逃げないなんて、冷静ねぇと褒めてあげるわよ。もし逃げたらお仕置きに背後から攻撃魔法を打ち込んでいたかもしれないわぁ♪このあたしと堂々と対峙しようとする美しい第二王子のアルフレッド様にますます惚れてしまうわねえ」
「どうしても聞きたいことがあったからな。呪いの解き方を教えてほしい」
「呪い?なんのことかしら?」
赤色のネイルがまるで血のように赤く、唇に指を持っていくと妖艶で魅入ってしまう美しさがあります。美しいものが好きというだけあって、イゾルテ自身もかなりの美女です。
「とぼけるな!」
アル様はどうやら私の呪いを解く方法のために危険を顧みず、残ってくれたようです。
「怒っているの?でもあたしは何も怖くないわよ。だってあたしに勝てる者なんてこの世に存在しないもの。最強の魔力を持って生まれた選ばれた人間なの。アルフレッド様もそうでしょう?その美しさと魔力をあたしの傍にいて、いかしてみない?剥製にするのはもったいない気がしてきたのよねぇ。あなたならあたしの隣がふさわしいと思うわ。だいたい、こんなチンケな王国で魔力を抑えて生きるなんて楽しいわけ?」
誘惑するような言葉を放ってゆく魔女イゾルテです。でも騙されてはいけません。アル様は大丈夫ですよね?
ハラハラしつつ、影にかくれて見守ります。アル様は魔女から目を離さなず向き合ったままです。
「断る。楽しいとか楽しくないではない。王子として生まれたからにはその責務があると思っている。魔力の制御ができないのは自分が未熟なせいだ」
……魔力の制御が難しく、苦労されているのは知っています。アル様は自分の置かれている立場や責務から逃げようとしていないのがすごいです。
「自由になれるわよ。今なら剥製にしないで、あたしの右腕にしてあげるからぁ」
自由。なんて素敵な響きでしょう。きっとアル様は欲しいと思っていると……思います。なぜなら……何も言い返さず沈黙したからです。
マズイです。このまま最強災厄の魔女の甘言にアル様が引き寄せられてしまうことになったら……この王国だけでなく、世界がピンチだと思います。魔女とアル様の魔力があれば、世界征服だってしてしまうかもしれません。
それになにより私の前からいなくなってしまうかもしれません。アル様がいなくなったら寂しいですし悲しいです。想像しただけで、私の心は暗くなり、沈みこみます。
ここは魔女を追い払うのが先決です。そういえば幻影なのに力を使えるのでしょうか?私はふと思いました。体が透き通っているということは、意識だけ飛ばしているのでしょう。本体はどこに?
私がキョロキョロしている間に、アル様が手の近くにあったフォークを素早くとり、投げました!!
「魔女よ。失せろ」
イゾルテの幻影、まっすぐに顔の中心に刺さったと思ったら、カランっと音がして振り払われ、「ふぅん。それがおまえの選択なのねぇ~。でも絶対にあきらめないわ」という声と共にフッと消えました。
魔力が込められたフォークですね!ただのフォークではなかったようです。すごいです!フォーク一本に強い力を一瞬で込めたのでしょうか。イゾルテは追い払われました!
アル様がやってみせたことは簡単ではありません。すごいことです。小さなものに魔力を宿すなんて?あれっ?……これはもしや私のドールハウスを作ったことでできるようになったのでしょうか?アル様の才能には本当に恐れ入りますね。
フォークが床にカランと落ちるとともに緑色のエメラルドの石が床に落ちてパリンッと割れました。これが、城に持ち込まれたから魔法が発動したのでしょう。どこからでも器用に入り込むイゾルテです。本当にすごい魔女です。
「さすがアルフレッド殿下だ」
「あの魔女を撃退したぞ!」
周囲がざわつき、アル様への称賛の声が起こり始めました。
そこへ上ずった声が混ざりました。あまり私の苦手な人物が前にでてきたのでした。
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