ほしわた氏の全作品の中で最も「叫び声の密度」が高い一作だ。
38歳おじさんが絶世の美少女聖女に転生し、転生3日目にしてすね毛の存在に「侵略者ですわ!」と絶叫する——この第1話の設定の使い方が鮮やかだ。美少女TSものというジャンルを「美の維持コストに初めて直面する男」というリアルな視点で開いており、すね毛・便意・洗濯・生理など「女子をサボりだと笑っていた前世のツケ」を全身で受け止める主人公の悲鳴が笑えて、どこか爽快だ。
内面の荒ぶる大阪のおじさん語と、外に出る凛とした聖女ボイスのギャップがこの作品の最大の武器で、「自動翻訳(オート・トランス)が無慈悲に作動する」という設定が終盤まで笑いのエンジンとして機能している。
だが既存レビューが指摘するように、この作品の底には「他者の痛みを知ることが人を変える」というテーマが流れていて、魔族との業務提携や魔王との頂上決戦が単なるコメディに終わらない理由はそこにある。完結済み26話・5万7千字。「裏庭のダンジョン」と合わせて、ほしわた氏のコメディの引き出しの広さが一番よく分かる二作だ。