冒頭、主人公が祖母の思い出を振り返る――
晩年は認知症を患い、孫である主人公を「戦死した夫」と思い込んでいた祖母。
主人公に向かって「総一さん」と呼びかけ、会えば乙女のように笑っていた。
彼女が語るのは、亡き夫との瑞々しい暮らしの一コマだ。
しかし、百歳で天寿を全うした彼女が最期に遺したのは、意外な「謝罪」の言葉だった。
『総一さん、あの時はごめんね……』
戦後の荒波を女手一つで生き抜くため、彼女が切り捨て、封印してきた「あの日」の記憶。
突き放さねばならなかった母の強さと、女としての悲しみ。
セピア色の古い写真を見ているような、美しくも切ない家族の物語でした。