第3話 超兵器「無」戦場に立つ
国境の平原。
地平線を埋め尽くすのは、帝国が誇る魔導戦車の列。鋼鉄の轟音が大地を揺らし、数万の兵が勝ち誇ったように剣を掲げた。
対する王国軍。
中央に立つのは、あの「全裸パレード」から数年、さらに恰幅の良くなったエドワード王。
彼は相変わらず、王冠とマント(の下は例によって何もなし)という、あまりに前衛的なスタイルで馬に乗っていました。
「ゼニスよ。例のモノは、準備できているな?」
「もちろんでございます、陛下。今、皆さんの目の前に鎮座しておりますよ」
ゼニスが指差した先には、「ただの広大な泥沼」
王国軍の兵士たちは、互いの顔を見合わせる。
「……ゼニス殿。あそこには、泥しかないように見えるが?」
一人の騎士が不安げに尋ねると、ゼニスは鼻で笑いました。
「これだから素人は困る。あれこそが最新型・超魔導戦車『グラン・ヌード』。装甲の屈折率を極限まで調整し、知性の低い者には背景の泥と同化して見えるよう設計されているのです。……陛下、出撃の合図を!」
「うむ! 『グラン・ヌード』、発進せよ!!」
王が虚空に向かって剣を振るった、その時です。
ゼニスは、あらかじめ泥沼の底に仕込んだ大量の「火薬」にこっそりと火を放った。
ドォォォォォン!!
凄まじい爆発音と共に、泥が空高く舞い上がった。
「見たか! あの破壊力を!」
「見えねえ! 弾道が全く見えねえぞ!」
「なんて恐ろしい兵器だ、攻撃の予兆が一切ない!」
王国軍(知性が高いと思われたい人々)が勝手にパニックになり、それを聞いた帝国軍の偵察兵が、青ざめて自軍の本陣へ駆け戻る。
「報告! 敵軍、姿の見えない超長距離砲を発砲! 迎撃不可能です!」
帝国軍の指揮官、知略で知られるアイゼン将軍は、望遠鏡を覗き込んだ。
(バカな……。何も見えん。だが、あの爆発は何だ? 泥が舞い、地面が抉れている。確かに『何か』がそこにいる……。まさか、私にこれが見えないのは、私が『無能な将軍』だからなのか!?)
アイゼン将軍は、部下たちの視線を感じました。
「将軍、敵の巨神兵がこちらを向いているように見えますが……」
と、一人の部下(空気を読んだ嘘つき)が言った。
アイゼンは冷や汗を拭い、叫ぶ。
「……ああ! 私にも見える! あれは……いかん、あの構えは広域殲滅魔法の予備動作だ! 総員、退避ィィ!!」
「見えない兵器」に怯えた帝国軍は、一発の矢も射ることなく、互いに重なり合って敗走した。
戦場に残されたのは、全裸の王様と、爆発で泥だらけになった詐欺師、そして一滴の血も流さずに勝利した最強の軍隊(?)だった。
ゼニスは王様の背中を叩きながら、耳元で囁く。
「陛下、大勝利ですな。さて、メンテナンス費用として、さらに金貨十万枚を……」
この日、歴史にはこう刻まれた。
「王国の叡智、帝国の鉄鋼を虚空へと葬り去る」と。
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