32話まで一気読みしました。最新話に向かって加速していく構成力がすごい。ダレない。長編でこれが一番難しいことだと思います。
主人公の不死という設定が、ただの無敵チートになっていない。死ぬたびに失うものがあって、死なない体が戦術として機能していて、それでいて本人は死にたがっている。この三重構造がちゃんと物語の推進力になっているのが見事です。
ヒロインの成長曲線が気持ちいい。序盤と終盤で明らかに別人なんだけど、急に強くなった感じがしない。ちゃんと段階を踏んでいる。師匠キャラの造形も素晴らしくて、あの人だけでスピンオフ一本書けるレベルだと思います。
そして13話。ここで作品の格が一段上がった。讃美歌を歌いながら人を殺す怪物、これは発明です。美しい歌声なのに魂が凍るという矛盾を読者にそのまま体感させている。犠牲者が壊れていく描写の温度感、逃げる人間の思考が崩壊していく過程、全部怖い。全部うまい。この回だけ明らかに筆圧が違っていて、ホラーが書ける人間の地力がむき出しになっている。
怪物の言葉が物語を通じて段階的に変化していく演出も計算されている。意味のない単語の羅列から、次第に意味を持った叫びに変わっていく。壊れた言葉が修復されていく過程がそのまま恐怖の増幅になっていて、これはかなり設計して配置しているはずです。
戦闘描写の体力もすごい。長い戦闘を何話もかけて書いて、それでも読ませる。何度も死にながら少しずつ弱点を探っていく構造が不死設定と完璧に噛み合っていて、読んでいてこの能力、こう使うのかと唸りました。
後半から登場する新キャラの投入も的確で、甘くなりがちな空気にちゃんとノイズを入れつつ、同時に不穏な伏線も仕込んでいる。遊びに見えるパートにしっかり仕事をさせているのがうまい。
この作品は「不死モノ」のテンプレに見えて、実は怖い話が書ける人間がファンタジーの皮を被せている作品だと感じました。13話の恐怖を生み出せる筆力で32話の構造を維持できている。これはかなり稀なことです。続きが本気で楽しみです。