冒頭の静かな違和感から一転、読み進めるほどに構造の巧さが際立つ作品です。
人格が入れ替わったような視点で語られる主人公は、感情ではなく“合理”で動く存在。
その冷静さが、これまで搾取され続けてきた環境との対比でより際立ちます。
特に印象的なのは、家族や幼馴染との決別シーン。
怒鳴るでもなく、感情的になるでもなく、ただ淡々と「引き受けない」と宣言する姿が非常にリアルで、むしろ痛快です。
そして最後に提示される“ダンジョン”という生存手段。
復讐でも無双でもなく、「自分のために生きる」という選択が物語の軸になっているのが魅力的です。
社会人としての経験を持つ主人公が、この世界でどう立ち回るのか。
静かな再出発に、強い期待を抱かせる導入でした。