朝、炊きあがったご飯をしゃもじでほぐす。何年も繰り返してきた動作。子供用の小さな茶碗を手に取って、主人公・有紗の動きが止まった。――そうだった。蒼太はもう、いない。我が子という一番大事なものを失っても、それでも死ぬまで生きなくてはならない。深い深い喪失感を抱えながら、無心でおむすびを握る姿が胸に迫ります。子を亡くした母親の、痛みと再生の物語。おむすびを、大切なあなたに。
久しぶりに、読んだ後の心の余韻が続きました。おむすびなんて普通のキーワードなのに、そこには想いが詰まっていて。自分の思い出が色々蘇って来ました。ありふれた物が、その人にとってはかけがえのないもの。そんな事をふと考えさせられました。良い読書時間をありがとうございます!
余白を最大限にみつめてください。そこに込められた母の愛情は、読む人の涙を誘います。ぜひ、読んでみてください。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(115文字)
喪失から始まる物語なのに、終盤で泣かされました。説明を削ぎ落とし、読者が感情を重ねる余白を残した筆致が見事です。泥だらけの靴、父親の不在、淡々とした死の描写。すべてが過剰でないからこそ、母親の痛みが静かに伝わります。痩せた野良猫との再会は、感傷的に見えて、喪失を抱えた人が心を結びなおす小さな希望でした。すばらしい短編をありがとうございました。