幕間 -グレン・セラフリートの独白-
目を開けたら眠りにつく前とは違う天井だった。
明日は目覚めないかもしれないな、と思いながら眠ることが多くなった。78歳、代行人にしては長く生きたと思う。区画外という魔物の生息地ではいつ命を落としてもおかしくはないのに、俺は幸か不幸かこの年齢まで生き延びた。さすがに区画外に出て行く体力はなくなって、後進の育成に助力して日銭を稼ぐ生活は悪くはなかったけど、妻のジェシカにも同じことをさせてしまったのは申し訳なかったと思う。その妻も少し前に息を引き取り、一人でいるこういう日が続いていつか俺も静かに死んでいく心算でいた。
今、唐突に違う場所で目が覚めるまでは。
知らない天井、ではなかった。俺が若い頃、それこそ10代の頃に暮らしていた家の天井に酷似、というかそのものでは、と思えてベッドから勢い良く上半身を起こす。
身体に違和感がない、筋肉が言うことを聞かないなんてこともなく、骨が軋むような痛みもない。目に入った腕には傷跡も皺もなく、顔に触ってみても同じ状態にあることが知れた。鏡がないので部屋を出て洗面所に向かう、部屋の外も昔に住んでいた家と変わらないように思う。そして辿り着いた洗面所の鏡には若い頃の俺が写った。
「は、ははは…………」
時間が巻き戻った。夢ではなく、そうであって欲しい、という願望が頭を占める。
このくらいの年齢で思い起こすのは養成所だ。
ジェシカとは養成所で出逢った。同期で、近距離を担当する俺と遠距離を担当するジェシカとでコンビを、そこに盾役のアンソニーと回復役のエリーを加えて授業中のパーティを組むことが多く卒業後もそのまま、そして俺はジェシカと、アンソニーはエリーと結ばれて、30代後半で引退と共にパーティは解散した。
そのことに不満はない。充実した日々だったし、代行人としては順風満帆だったと本当に思う。
後悔は、友人を殺すことになってしまったこと、ただそれ1つ。
シン・ケシウラ、顕術の適性があるのに普通のそれとはかけ離れていた所為で冷遇された、俺達の友人。頭が良い努力家で、筆記試験は常に上位だったにも関わらず、それでも実技が伴わないから、と教員達からすらも庇われることなく養成所を去り、敵になって、殺すしかなくなってしまったシンを、今度は助けられるかもしれない。
いいや、助けるんだ、と俺は鏡に映る自分に誓う。
その為にはまた、養成所に行く。
俺は両親に話をする為に洗面所を出た。
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まずは皆と友人になるところから!
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