貴方より優しいひと
貴方より優しいひとなんて、ごまんと居たわ。
包帯を巻いてくれたひとも、服を着せてくれたひとも。
食事を作ってくれたひとも、寝床を用意してくれたひとも。
わたしの話を聴いて、涙を流したひとだって居たわ。
なのに貴方は、傘を放って、服を破って、わざと転けた。
お腹の虫が鳴いたって、通行人に蹴られたって、わたしの横に座ってた。
ずいぶん長いこと、貴方の声を知らなかったわ。
知っていたのは、貴方の右手が暖かいことだけ。
貴方より優しいひとなんて、ごまんと居たわ。
でも、わたしには貴方の優しさがいちばん優しかったの。
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