立ちはだかる己


背筋は伸ばして、膝は揃えろ。

へりくだって、おどけて見せろ。

それでも賢くあれ。おまえはバカにされることが嫌だろう。

泣くな。醜い顔が殊に醜い。

口答えするな。傷つけてしまうに決まっている。

諦めてしまえ。もう期待はされていない。

欲するな。手にしたところで余すのが業だ。


煩わしい。

私の前に立つおまえは誰だ。

おまえが嫌いだ。

消えてくれ。


私とておまえが嫌いだ。

生まれ損ないの出来損ない。

おまえに対する罵倒がつらつら出るさ。


ずっと、ずっと、ずっと

否定の肯定に吐き気を憶えて。

他者の瞳が揺れる様に恐怖を憶えて。

孤独に打ちひしがれては涙を呑んだ。

私のそばには私しかおりませぬ。

二人の私は不仲ですとも。

他者に傷つけられずとも、私の傷は自己完結にございます。

立ちはだかる己にすら勝てぬ者がどこに居りましょう!

恐ろしきは私のこころ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る