病棟
ここはとある病棟、齢十歳前半らしき少年が窓の近くの椅子に座って本を読んでいる。しばらく集中して本を読んでいたが、突然部屋の外から強くドアを叩く音と共に嘲笑うかのような声が聞こえ、少年は表情を曇らせて本を読むのを止める。
そしてドアの外をひと睨みし、ため息をつく。少年はベッドの方に移動し座り、虚ろな表情で部屋を見回す。錠の付いたドア、テレビの無い床頭台、二重の窓、薄い白いシーツのベッドと薄い掛け布団、そして椅子と壁に備え付けられている洗面台と鏡、どれもこれもが少年の目には鈍色に写る。
そしてドアの外から、次は大きな悲痛な泣き声のようなものが聞こえ、少年はもう一度大きなため息をつき、今度は座っていたベッドから椅子に移動する。そして二重窓の十センチ程度の開いた網戸越しの部分から少年は窓枠に頬杖しながら外の空気を吸い、景色を眺める。
空は曇り空で何も写していなく、見える限りは森が広がっている。そしてたびたび飛んでいる鳥たちを目で追いながら少年は深呼吸を繰り返す。そして幾分か気持ちを落ち着かせると床頭台に置いてある取っ手付きのコップを口に当てて水を飲む。ふと外を見れば雨が降り出し、静かな雨音が部屋に響く、それに少年は口角を上げながら再度本を開き、またその世界に入り込むのだった。
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