診断はするけれど、治療はしない。原因不明の不調の"正体"だけを教えてくれる、ちょっと不思議なメンタルクリニックのお話です。
陰陽師の末裔だけれど力を継げなかった先生と、かつて自分も救われたカウンセラー。二人(と、ちゃっかり者のAI)のゆるやかな掛け合いに、ハーブティーの香りが添えられて、訪れる人の心が一杯ずつほどけていきます。「あなたのせいじゃない」と、そっと差し出されるやさしさ。症状の奥にある"本当の理由"を見つけてもらえる安心感が、この作品の何よりの魅力です。
十万文字を超える大ボリュームなので、全話を読み切るには、正直すこし気合がいります。
それでも——どうか、エピローグまで辿り着いてほしい。
そこまで来たとき、この連作がなぜこの形で綴られてきたのか、ふいに腑に落ちます。積み重ねてきた一話一話が、静かに回収される。やわらかいのに、不意打ちのように胸を突かれました。
泣けました。
長い道のりだけれど、あのエピローグは、きっとその全部を肯定してくれます。