第12話 見た目はおっさん中身は美女の歩く姿は英雄王










◇◇◇

虫喰インセクタぁ!」

 ホタルが叫びながらメフェリン目掛けて拳を振り上げる。ホタルの事だ、能力で外殻に纏われて少しは攻撃が効くと思ってるんだろう。ただ、現実は酷いもんだった。勇猛果敢に飛び出したのはいいものの、ホタルはメフェリンの一撃を顔面で受けた。そのおかげでホタルの体は吹き飛び、少しして巨大な木の幹に打ち付けられた。


「ホタルっ!」


「…………」

 返事がない、意識を失ってると見るのがいいだろう。しかし、これは大変なことになった。ホタルは意識を失い、相手は魔王親衛六騎士デモンズナイトの1人ときた。聖音マルカ裂間テレポはあと少しで使えるはずだけど、ホタルを置いて逃げられないし、やっぱり戦うしかない……


「もう一度聞こう。貴様ら、何を見た」

 さっきのオーラ、まず間違いなく化け物のオーラだった。それを遺跡内部で感じたのは真実。でもその正体がなんなのか思い出せない……確かに会ったはずなのに。


「……っ!?」

 メフェリンの質問に答えようとすると口が開かなくなる。何者かに口を抑えられてるように。


「……そうか、やはり言わぬか」

 メフェリンが呆れたような、そんなような顔をした。瞬時、メフェリンの、その姿が消えた。と感じたその時、既に後ろに回られていた。それを本能で感じたニトはすかさず頭を下げる。


「ほう……これを避けるか。流石は天使」

 少し感心したような口ぶりでメフェリンは言う。


「では、これならどうだ」

 するとメフェリンは右手に謎の光の玉を作り出した。直感で不味い物だと理解したニトは咄嗟にメフェリンとの距離を取る。不気味な光、それはまるで全てを見通す光のよう。


「この過去観玉パサードバルを貴様らに当てれば過去が見れる、それで真相を確かめさせてもらう。大人しく当てられてくれ」

 過去が見れる……? ……めんどくさい能力だ。


「得体の知れないあんたの得体の知れない玉に当たるほど、私はバカじゃ無いのよ」


「そうか……しかし、貴様に拒否権など無いと知れ。残念だが、もう貴様はこの過去観玉パサードバルに触れている。見させてもらうぞ……」


「貴様の過去を」










◇◇◇

〜ホタルの意識内〜

「……」


〈……ろ〉


「……」


〈……きろ〉


「……」


〈起きろ、ホタル〉


「……ぁ?」


〈なんとも情けない、拳ひとつであの化け物に勝てると思っていたのか〉


「……うるせぇな、それより」


〈いままでどこにいた……か?〉


「……」


〈あの後、私は貴公から目を離さなかった。遺跡の中で出会った???や、メフェリンの事も、全て見ていた〉


「手を貸してくれても良かったろ」


〈いいや、それはダメだ〉


「は? なんで?」


〈私は、貴公を認めてはいない。私を使いたいのなら、それ相応の力をつけることだな〉


「力……?」


〈そうだ。貴公は弱い。力をつけねば、この私に、貴公は喰われるぞ〉


「どういう意味だ……?」


〈そのままの意味だ。貴公が虫を喰らっていると思っているのかも知れないが、それは間違いだ〉


。私が貴公を喰らい、後にその体を奪わせてもらう〉


「はぁ!? んなこと聞いてないぞ!」


〈言ってないからな。ともかく、その体を奪われたくないのならば力を付けろ。そうすれば、私を使役できる〉


「力……」


〈そう、力だ。力を付けるのだ〉


「どうやって……力を」


〈おっと時間だ。次会う時は、力が付いてると期待していいのだろうか〉


「おい、待てよロリオン。力って」


〈自らで思考するのだ。しかし、いずれ巡り会うだろう。力を付けられるその機会に〉


〈では、また会おう〉















◇◇◇

〜ニト メフェリン〜

「見たぞ、貴様の過去。……貴様、に燃えているな。素直にオーラの出処を言っていれば、復讐を成すことも出来ただろうに」


「……っ!」

 天弩アルバレットで雷の矢をメフェリン目掛けて撃つ。が、指で弾き返された。復讐……私は復讐を成す。だからこそ、こんな所で死んではいられない。何としても生き残って……お父さんとお母さんを殺した犯人クソやろうを見つけ、殺す。


「しかし、この白い男は何者だ……? オーラが微塵も感じられない。では、あの異質なオーラは誰の物だ……?」

 今がチャンス、考えてる内に攻撃……


「まぁいい、貴様にもう用はない」

 メフェリンの指先に光が収束していく。その光は天使が使う物、星放アステールによく似ている……なぜ? 魔物が天使の力を使えるって言うの? いや、まさか。きっと別の何かに違いない。天使と魔物は正反対の存在、完全無欠の正義と悪逆無道の悪。そんな魔物が天使の力を使えるわけがない、だとしたら一体何?


「死ね」

 そう言った瞬間、指先の光から一筋の赤い光線が放たれた。咄嗟に避けるも、背中の左側の翼が抉れた。なんて威力、馬鹿げてる。


「これをも避けるか。多少はできる天使らしい」


「……褒められてるのかしら」

 このまま逃げるだけじゃ、一向に終わらない。あんまり使いたくは無かったけど、やるしかないかも。


「そろそろ終わらせたいのだけど、いいかしら」


「同感だ。早く死んでくれると助かる」

 殺すまでは行かないけど、ダメージは与えられるはず。詠唱がダサいのはあれだけど、この際気にしてらんない。やるか。




めぐれ、幾千いくせんいのち

ちてなおえぬたましい残響ざんきょう


せいき、つなぎ、無限むげんえが

因果いんが、その終点しゅうてんに、やいばきざ


ほし忘却ぼうきゃく彼方かなたよりこす

せ――輪廻りんねことわり


現界げんかいせ――――」

 もう少しで詠唱が完了する所で、私の横腹に違和感が生じた。それは激痛。視線をそこにやると、赤い光線が私の横腹を貫いていた。しかも、そこだけでは無い。左肩、左太もも、右翼。全て、メフェリンの光線に撃ち貫かれていた。


「……くそっ、あと少しだったのに」

 そう言うとメフェリンが口を開く。


「敵を目の前にしてそんな隙のある攻撃を入れるというのは、俺には理解できないな」


「……くそっ!」

 ふらふらと地面に倒れ込む。……立ち上がらなくては。こんな所で、終わるものか、終わってたまるか!


「……め、巡れ、幾千の……いのっ!?」

 再び詠唱しようとしたところを、メフェリンの足が再び止める。今度は腹に足を乗せ、動けないようにしてから仕留めるらしい。駄目だ、まだ終われない、終われない!


「天使にしては楽しめたぞ。貴様の事は、覚えておいてやろう」

 そう言うと、メフェリンは指先に光を収束させ始めた。少しずつ、けれど確実に大きくなる光の玉を目にした時の感情は、恐らく死。これが最後の光景か、綺麗な光だとは思う。これを見ながら死ねるなら、それでもいい気がしてきた。それでも、私の中にはまだ復讐の炎が絶えず生きていた。


「巡れ、幾千の……命……、朽ちてなお消えぬ、魂の残響……!」

 が、光の収束に間に合う訳も無いのは分かる。これで終わりか。ごめんなさい、ホタル。あなたを助けられなかった。本当に、ごめんなさい。お父さん、お母さ…………

 と、死を実感し、ホタルへの謝罪と両親への思いを綴ろうとした矢先、その声は聴こえた。



「待ちなさ〜い!」

 妙に低く、イカつくて芯のある声。しかし、どこか艶めかしさをも感じる声。

 少し考え、そのまま声のした方へ目をやると、そこに居たのは信じられないような人物だった。


「も〜メフェリンちゃんったら、可愛い女の子をイジメちゃあ駄目じゃないのよっ」

 そこに居た人物の姿は、とんでもなかった。綺麗な長髪にとんがったサングラス、青い口紅、筋骨隆々の肉体、それを覆い隠すピッチピチの黒いスーツに黒いマント、それとヒール。……1言目の感想としては、なんだコイツと言ったところだろうか。


「……貴様、なぜここにいる」


「嫌ぁ〜ねぇそんなツンツンしなくたっていいでしょぉ〜?」

 そう言った瞬間、その男はメフェリンに対して熱烈なウィンクをお見舞いした。私は、どういう感情でこれを見ればいいのかが、それを知りたかった。


「……」

 メフェリンは黙っている。知り合い……? メフェリンちゃんとか言ってたから知り合いなのだろう。どこか、メフェリンが引いてる気がする。


「ねぇそこの美少女ちゃん。助けて欲しい?」


「えっ」


「助けて欲しいって聞いてるのよ、どお?」

 どうって、助けて欲しいに決まってる。ここで死んでられないんだ、もしあの人が味方なら、2対1で戦え……ないか。もうボロボロだ。とにかく、助けて貰えるなら助けて欲しい。


「た、助けて!」


「よく言ったわ。さてメフェリン。その子、渡して貰える?」

 そう男が言うと、メフェリンは私を睨んだ後、こう言った。


「命拾いしたな、貴様。次会った時、必ず貴様を殺してやる」

 そう言ったメフェリンは背中の外套に隠してあったと思われる黒い翼を広げ、彼方に消えていった。







「さて、アナタ大丈夫?」


「致命傷は無いので、大丈夫です」


「良かったわぁ! あそこにいる子はアナタの仲間?」


「はい、あいつの攻撃で意識を失ってると、思います」


「分かったわ。とにかく場所を移しましょう。アナタ、天使よね。聖音マルカを使える?」


「つ、使えますけど」


「じゃあ座標をここに合わせて…………よし、開いてくれる?」

 承諾して裂け目を開くと、そこにはどこかの門の前に繋がった。男はホタルを抱えあげると一言。


「さ、着いてきて」




















第12話 見た目は紳士、中身は超美女、歩く姿は英雄王 完。

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