井野匠先生が、全力で読者を殴りに来ています。
泣きました。泣きました。
物語でしか、泣けない私です。
自分のために流す涙は枯れています。
これは、良いです。
平安時代に遡る、霊枢治療師・白川一族のルーツが明かされる本章。
建物の名称や描写など説明も多いのに、煩雑に感じることなく世界に入れます。
考証がしっかりしているので、安心して読めるのです。
ときの為政者、怪僧、権力者、上皇、后など高貴の方々の思惑・野心・情念が複雑に絡み合います。
一見して悪人と思われるようなキャラクターの奥行きが、行間からブワッと立ち上ります。
語りの妙義を爆発される井野匠先生に、「大師…どこのお寺で修行なさったのですか?」とコメントで訊いてしまいました。
笑っていらっしゃいましたが、見事に開花なさっています。
本シリーズの最高傑作です。間違いない‼️
読んでいて、何度もジョゼッペ・トルナトーレ監督の作品を思い出しました。
トルナトーレ作品が「失ってしまったものを抱きしめながら生きる人」を描くのだとすれば、この作品は「失われたと思っていたものを掘り起こし、その本当の価値に気づかせる物語」でした。
だから、ラストで訪れるカタルシスは単なるどんでん返しではありません。
登場人物の人生そのものが、静かに、しかし根底から塗り替えられる。
読後には「そういうことだったのか」という驚きよりも、「この人は、ずっと愛されていたんだ」という温かさが残ります。
決して万人向けとは言えません。
歴史、仏教、思想などの知識が随所に登場し、決して読みやすい作品ではありません。私自身、細かな部分は理解しきれませんでした。
それでも、不思議とページをめくる手は止まりませんでした。
理解できる情報量以上に、作品そのものが持つ熱量と、人間を見つめる優しい眼差しが伝わってくるからです。
この作品は、説明することよりも、読者の心に何かを残すことを優先しているように感じました。
もし日本でジョゼッペ・トルナトーレを思わせるような、人間の喪失と再生を丁寧に描く映像作品が作られるなら、こんな空気になるのかもしれない──そんなことを考えました。
派手なエンターテインメントではありません。
けれど、時間が経つほど心の中で静かに育っていく作品です。
もっと多くの人に読まれてほしい。そんな気持ちになった一冊でした。
平安時代、桓武天皇の密命を帯びて唐へ渡った最澄が、同じ遣唐使である空海にその手柄を奪われる歴史上の実在人物を巻き込みながら、霊枢治療師シリーズの起源そのものを描く野心的な第0部だ。
「不老不死の法」こそが白川家代々の秘術「黄帝内経」であるという設定が、これまでのシリーズ作(第一部・第二部)で描かれてきた「雨」を祓う力の由来を一気に深める仕掛けになっている。空海という人物を単なる天才としてではなく、人間味のある野望や謀を持つ存在として描いている点も読み応えがあり、歴史上の人物が輪郭を持って動く様は、時代小説としての説得力を支えている。
連載中・全16話とまだ序盤だが、シリーズ三部構成(第0部・第一部・第二部)が時代を超えて繋がっていくという壮大な構想の出発点として、シリーズ既読者にはたまらない一作だろう。逆に、ここから読み始めても物語の根幹に触れられる入り口として機能している。
平安時代の初期、桓武天皇・空海・最澄などのいる時代、その歴史上の人物と主人公の霊能を撚り合わせながら物語が進んでいきます。
雰囲気、世界観がとても深く、その時代のその場所にいるかのような気持ちになれますね。
本筋ではないかも知れませんが(全く関係ないわけではないと思いますが)、空海の「天才」の理由の解釈が面白いなと思いました。
いろんな本に出てくる空海よりも、随分と人間味があって魅力的に思えました。
歴史上の人物がはっきりとした輪郭で描かれていてすごかったです。
このレビューを書いた時点で私が読んだのは現時点で公開されている第10話まで。
この先どうなっていくのか、続きが楽しみです!!