物語冒頭の惨禍と静かな再生の対比が鮮明で、読者を世界観の深部へ自然に導いています。「視える力」を単なる異能としてではなく、生存と倫理の問題に結びつけて描いている点に知的な手応えを感じました。千里と朗月の対話は、価値観の衝突と理解の芽生えが丁寧に積み重ねられており、人物像に説得力があります。説明に頼らず、光・匂い・温度といった感覚描写で世界の仕組みを伝える技法が効果的です。物語が個人の生から国家規模の運命へ拡張していく予感を、過不足なく示している点が印象に残りました。