第68話 自意識適正系女子爆再誕
「……ん」
環境が良すぎて、気がついたら寝ていた。
「寝てたか、今何時だ」
今日取り付けた時計を見ると、2時を示していた。
「3時間くらい寝てるな、まぁいいか」
忘れ物がないか確認してから、廊下に出て鍵を閉める。
「家に帰ったら……飯食って、勉強か」
そんなことを言っていると、
「ん?悠斗くん?」
なんだか聞き覚えのある声がした。
「……よぉ」
振り向くと水野さんがいた。
「なんでそんな嫌そうな顔するの!」
「うるせぇからな、水野さん」
「酷い!しょんぼりーぬ」
「……」
「悠斗くん。そこはさ?にっこりにゃんこー!
って言うんだよ?んじゃ、もっかい」
「勘弁してくれ。てか、なんでいんだよ」
「え?あぁ、普通に部活だよ。今週の土曜日に高総体だからさ」
「なるほどな。休日も部活とか大変だな」
「まぁ大変だね。でも悠斗くんが応援してくれてるし頑張るよ!」
「おーそーか。がんばれー」
「そんなに死んだ声で言わないでよ!」
「正直興味ねぇし」
「興味持って!興味津々で頼むよ!」
「難しいな」
「なんで!?普通に持てるでしょ!?」
「全く持てない」
「じゃあ私への興味は!?」
「……更にない」
「更にないって何!?」
「今後次第だ」
「今後次第ってどういう基準なの!?」
「分からん」
「分からんてなに!」
水野さんが頭を抱えた。
「悠斗くんってさ」
「なんだ」
「もしかして私のことあんまり好きじゃない?」
「……そこそこだ」
「そこそこ!?そこそこって何!?」
「嫌いではないがそこまで好きでもないという意味だ」
「傷物になっちゃうよ!」
「絶対使い方間違えてるからやめてくれ」
「じゃあ、もう少しオブラートに包んで!」
「包み方が分からん」
「じゃあ今から特訓ね?」
「嫌だ」
「はい特訓開始!まず私に優しい言葉をかけて!」
「特訓を始める前に断ったんだが」
「聞こえなかった!」
「難聴か?」
「え?なんて可愛いんだまるで蝶の様だ。訳してなんちょう?」
「極曲解だな」
「はぁ、まぁいいけどさ。てか少し待ってて」
「なんかあんのか?」
「着替えるからさ、一緒に帰ろ?」
「嫌だ。ひとりで帰れ」
「ありがとう!」
「聞いてたか?」
「聞いてたよ!でもありがとうって言ったら私の勝ちでしょ!なんでも後出しは最強!」
「どういう解釈だ」
「一緒に帰ってくれるってことでしょ!」
「違う」
「違くないよ!私が法!」
「……」
「てかさ、鍵貸してくれない?」
「どこの鍵だよ」
「さっき出てくる時鍵かけてたじゃん?その鍵」
「……見られてたか」
「まぁね!水野家長女をナメないでよ!無くさないからさ?」
「……まぁ、いいか」
そう言って鍵を渡す。
「これでひとりで帰れないね!悠斗くん!」
「……今、最高の笑顔してるな。お前」
「え!?まさか……惚れた?!」
「冗談は顔だけにしてくれ。さっさと行け」
「はいはーい、わっかりましたよー、ツンデレさーん」
「黙れ」
廊下で壁にもたれながら待っていた。
しばらくしてドアが開いた。
「ごめん、待った?」
「……」
「いいや、今来たところだよ【水野さんによる桐谷ボイス】」
「……」
「あれ?死んだ?」
「生きてるわ」
「良かった……嬉しくて目からウロボロスだよ」
「せめて液体であって欲しかったけどな」
「目から王水」
「それならいい」
「失明しちゃうよ!止めて!」
「じゃあ出すな。止めろ」
「涙が……止まらないんだよね、うんうん。わかるよ」
「勝手に共感すんな、俺泣いてねぇだろ」
「今はね?」
「……さっさと帰るぞ」
「話はその時ってこと?」
「……そうだな」
「しょうがないね」
下駄箱に行って、靴を履いて歩き出す。
昼の風が吹いていた。
「てか、なんで水野さん友達と帰らねぇんだよ」
「え?友達と一緒に帰ってるじゃん!マイフレンドイズキリタニ」
「俺は友達では無いが、水泳部の仲間いるだろ」
「あー、それね。水泳部って大会に登録できる人数決まってるんだよね」
「なるほどな、それで?」
「私の友達がメンバー入り出来なかったから、今日の練習私1人なの、同学年。悠ちゃんがいてよかった」
「悠ちゃんって友達がいるのか?」
「悠斗くんのことだよ?」
「さすがにキモイからやめろ」
「さっきからパンチが鋭いなぁ。具志堅みたい」
「チョイスが若者じゃねぇな」
「私は16歳!今をときめくJKだよ!」
「ジャパニーズ高校生か」
「女子高生だよ!!」
「同じだろ」
「違うよ!ニュアンスが全然違う!」
「どう違うんだ」
「JKってさ、なんか、こう、青春感があるじゃん!」
「高校生も同じだろ」
「違うんだよ!JKって言葉にはさ、放課後のファミマとかさ、友達と撮るプリクラとかさ、そういう全部が詰まってるんだよ!」
「……水野さんは難しいことを言うな」
「難しくないよ!これが青春ってやつだよ!」
「そうか」
「悠斗くんには青春ないの?」
「……ないんじゃないか」
「なんで!?」
「別にそういうのに興味がない」
「放課後のファミマとか行かないの?」
「行かない」
「プリクラは?」
「撮らない」
「じゃあ放課後何してんの」
「家にいるかどこかにいるかだな」
「どこかってどこ!?」
「色々だ」
「色々って何!?」
「色々は色々だ」
「悠斗くんってさ、謎が多いよね」
「そうか」
「うん。どこで何してるかも知らないし、休日何してるかも知らないし」
「知らなくていいだろ」
「知りたいの!」
「なんでだ」
「友達だから!」
「友達じゃないと言ってるんだが」
「もっかい言うよ?友達だから!!ベストフレンドー」
「……」
「無視しないでよ!!」
「友達の定義が俺と違う気がするんだが」
「どう違うの」
「俺にとって友達はもっとこう……自然になるものだと思ってた」
「自然になってるじゃん!」
「どこがだ」
「気づいたら仲良くなってたじゃん!」
「水野さんにとってはそうかもしれないが、俺にとっては勝手に来ただけだが?」
「それが自然ってやつだよ!!磁石的な」
「そうか……」
「そうだよ!!」
水野さんが胸を張った。
桐谷はため息をついた。
「……水野さんって妙に人生観がファンタジーだな」
「そう?」
「そうだ」
水野さんが少し笑った。
桐谷はため息をつき、しばらく並んで歩いた
「……あのさ」
少しトーンを落として突然水野さんが言った。
「なんだ」
「まず……ごめんね」
「なんだよ急に」
「この前の帰りにさ、ひなたちゃんから少し話聞いてさ」
「それは日向から聞いたな」
「じゃあ何話したのかも聞いた?」
「一応はな。でも、本人から聞きたいからどこまで聞いたか教えてくれ」
「……わかった───────────
って感じかな」
「なるほどな、そこまでか」
「あれ?もっと怒るかと思ってた」
「……別にな」
「ほんと、ごめんね。悠ちゃんのことを知ろうともしないでズカズカと」
「その呼び方やめろ、あとそう思うなら近づいてくんな」
「いやそれはないかな」
「どっちだ?」
「どっちもだよ!悠ちゃん!」
「ゲロ甘で吐きそうだ」
「青春の味ってやつだね!」
「てかごめんから始めたんだから、そういう雰囲気を続けろよ。何開き直ってんだ」
「私にはそういう雰囲気は似合わない!人生楽しく!美しく!私は味噌汁を作って待ってる人より家でハーゲンダッツでも食って自分を自分で楽しませることのできる人になるのだよ!」
「なるってことは今は違うのかよ」
「違うね。カマチョ。可愛い可愛いウサギさん」
「やっぱ自己肯定感高いな、異常な程に」
「いやいや、前にも言ったでしょ?自意識適正系女子なのですよ私は」
「わがまま娘だな」
「懐かしい!覚えてたの?!その呼び方!」
「水野さんを象徴するあだ名だからな」
「私との会話が──────」
「それはない」
「……ちぇ。てかさ、話戻るんだけどさなんでそんなに怒らなかったの?」
「それは大切な部分を聞かれてないからだな」
「……大切な部分?」
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「この物語の行く先を見届けたい」
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今後とも、よろしくお願いします。
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ヒロインの性格が似てる訳ない。ハズ。
言ってはいけない。ブラックボックス。
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