ただ何でもない日常を

村日星成

第1話 この何てことのない日への感謝の言葉


朝起きて、窓を開ける、今日は不思議と町の喧噪はなりを潜めている人々が行き交う道を見下ろす。


武具を身にまとい外に出る。


町からはパンの焼く香りがしてきて良い気分だ、空は青く天気がいい。


ギルドに足を延ばす、ギルドは酒場と兼任している為に、朝っぱらからの酔っ払いがいる、そしていつもの受付嬢が笑顔でこちら見る。


「今日はどうしますか?」

「この依頼を」


掲示板に指を指す。


「はい、日芽花、採取ですね、ふふ、だと思いました」

「......わかってたか」

「はい、では少々お待ちを......はい、確認は取りました、どうかご無事で」


こうしてギルドを出た。



天気が良い日には苦労はしたくない、曇りとか天気が悪いには何だか働いてやってもいい気持ちが湧かんでもないだろうが、天気のいい日に働くと言うのはなんだか損をする気分だ。

そんな風に依頼をこなしているから受付嬢にもなんとなく俺の受けたいであろう依頼を把握されてしまったのだろう。


日芽花の採取は道こそ険しいが危険な魔物などはいない。慣れてしまえばピクニック気分で依頼を終えられる。


......楽な分報酬もしょぼいが、偶になら問題ない。


ふと、男女の声が聞こえてきた、ここは他の冒険者もいるだろうから当然だが......喧嘩か、どっちが正しいだとかそういう言い合い。


思うが天気の良い日、心が晴れやかな日に巻き起こる喧嘩の声ほど不愉快なものはないと思う。

とはいえ冒険者業に喧嘩は付き物、苛立ってもしかたない、そらに冒険者同士ということはそれなりに戦闘も出来る、もしもの事を考えると介入も考えた方が良いだろう。


「そこの二人、その辺にしておきなさい」


その二人は俺よりも冒険者ランクは下だった、だから出来た事だろう。


男はより難しく危険な依頼を受けて金を稼ぎたい。

女はたとえ貧しくとも安全に気長に冒険者を続けていきたい。


お互いのズレはなんとなく感じていて依頼の最中にそのすり合わせの話し合いを行おうとして、喧嘩に発展したのだという。

すり合わせの最中に喧嘩をしては元も子もないだろうに。


お互い譲歩し、もう少し時間をかけて金を稼いでいくという話になった。


「「ありがとうございました!」」


こうして二人は和解してくれた、まぁこういう事は多々起きるがそれを乗り越える度にパーティは強くなる、かつては俺もそうだった。


さてこっちもそろそろ帰ろうかな。



「お帰りなさい、ご無事でよかったです」

「ああ、これ」


受付嬢に袋に溜め込んだ日芽花を渡す。


「確かに確認しました、では報酬を」


金額は大した事ない、まぁ期待していないから問題はないが。

今日は家で静かに飲もうかな。


報酬の対価を片手にその場を後にしようとすると――


「あ、さっきの人!」

「......ああ」


あの喧嘩していた男女のペアか。


「あの時はどうも、俺、少し気が立ってた所為でこいつにヒドイ事を......」

「アタシも、気を使えればよかった」

「反省会はその辺にしておけ、お互いもう理解したんだから良いじゃないか、それで、俺に何か?」


二人の飲み合いに割り込むのは悪いだろう。


「今回の事をお互い話し合って、やっぱり幼馴染でもこういうのはなぁなぁにしてるのは駄目だなと痛感しました、貴方のおかげです」

「そりゃどうも」

「なのでどうです、今日のお礼に一緒に飲むのは」

「良いのか?」


と、女の方を見るがどうやらこれは規定事項だったようだ。


「まぁ良いか、ただ奢りというのは格好がつかない、俺の方が年もランクも上だ、金は全部俺が払わせてもらう」

「それじゃあ意味ないじゃん、アタシたちはお礼も兼ねてるのにさ」

「まったくだ」



こうしてお互い過去を武勇伝を語り合いながら一日を終えた。


何てことのない1日、語る事もなく、物語として書き起こす事もないだろう。

きっと数年後には忘れるそんな日の出来事。


ただ何でもない平穏な日常が与えられた事に感謝を込めよう。


そして、どうかこんな日が今後も続きますように――

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