『理屈じゃない気持ち』は、報われないことを前提に始まる同居物語です。
主人公・暁は、自分を恋愛対象として見ない相手、柊七生を想い続けています。
拒絶されても、突き放されても、条件を突きつけられても、それでも「隣にいる」ことを選ぶ。
一見すると、一途な純愛の物語です。
けれど読み進めるうちに気づきます。
これは、ただの純愛ではありません。
■ 誰も完全な悪者ではない残酷さ
この作品の凄みは、大きな事件や劇的な展開に頼らないところにあります。
同居生活は続きます。
会話もある。食事もある。笑顔もある。
でも、その裏でじわじわと感情が擦れていく。
特に印象的なのは、「誰も約束を破っていない」のに、確実に誰かの心が削れていく構図です。
善意が歪み、正論が刃になり、理屈が通用しない感情だけが残る。
読者は気づけば、「正しさ」ではなく「切実さ」で登場人物を見ている自分に気づきます。
■ 好きは本当に理屈じゃないのか
この物語を貫く言葉は、「好きって、理屈じゃないから」。
けれど物語は、その言葉を甘く肯定しません。
好きだから一緒にいる。でもそれは、救いにもなれば、縛りにもなる。
好きだから許せる。
でもそれは、自分を削ることでもある。
そして最終話で明かされる、もう一人の“分からない”感情。
理屈では否定できるのに、理屈では説明できないものが、確かに存在していて。
そこに答えは出ません。
出さないまま、物語は終わります。
■ この物語が描いたもの
これは、
BLでも
三角関係でも
依存物語でも
純愛物語でも
完全には収まらない作品です。
描かれているのは、名前を与えられない関係性そのもの。
愛なのか、罪悪感なのか、安心なのか、執着なのか。
どれか一つではなく、すべてが混ざっていて。
だからこそリアルで、だからこそ胸に残るんです。
■ 読後感
読み終えたあと、派手な感動ではなく、静かな余韻が残ります。
「救われた」とは言えない。でも「終わってしまった」とも言い切れない。
二人の日々は、きっと続いていく。
その続きを想像してしまう時点で、もうこの物語は読者の中に住み始めているのだと思います。
■ こんな方におすすめ
・甘い恋愛だけでは物足りない方
・感情のグレーゾーンを描いた作品が好きな方
・静かな心理描写をじっくり味わいたい方
・救いが明確に提示されなくても受け止められる方
『理屈じゃない気持ち』は、読者の心を大きく揺さぶるタイプの物語ではありません。
代わりに、静かに入り込み、気づけば深く刺さっている作品です。
優しくて、危うくて、誠実で、残酷。
最後まで読んだとき、きっとあなたも、
この関係に名前をつけたくなるはずです。
そして、きっとつけられないまま、しばらく考え込んでしまうと思います。
それこそが、この物語の強さだと思います。
人を好きになることに理由や理屈っていらない。その芯が最後まで通った純粋で一途なBLです。
主人公で大学二年生の暁は気づけばひとつ下の柊七生のことを好きになっていました。七生は一人暮らしを始めるタイミングで暁から一緒に住まないか、と誘われます。
七生は両親の離婚と母親の素行の悪さから家庭環境に恵まれない過去をもち、実家から離れたい気持ちを募らせていました。大学生の男と二人で同居なんて考えてもいなかった彼ですが、居心地の悪い実家を出たい気持ちが勝り暁と住み始めることに。男同士で二人暮らしなんて七生は正直望んでいません。七生は男を好きになることはなく、家の事は暁に任せ、女の子と外でよく遊ぶように。それでも甲斐甲斐しく七生の世話をする暁。七生はそんな事には気にも止めず自分のペースで生活していますが、心に綻びを見せ始めた頃……ついに事件が起きてしまいます。
か・な・り刺激的な内容を含むため万人受けはしませんが、私のようなコアな読者には深く刺さるかもしれません。
好きでいてごめんなさい――胸をえぐる感情が、
理屈じゃない気持ちとして胸に残る言葉の力が、
タイトルの意味として虚飾のない真っ直ぐな心情で描かれる、理屈抜きの純情な感情BLです。