静岡県西部のマイナーな山城を舞台に、城郭マニアの少年と風変わりな城霊・コサメの出会いを描く。土塁や堀切といった専門的な遺構の描写を交えつつ、開発によって消えゆく「名もなき歴史」への哀歌を綴っている。威勢はいいが孤独を抱えるコサメのキャラクター造形が魅力的で、地図にない場所を忘れないという少年の決意が胸を打つ。歴史の片隅にある情緒と現代の情景が重なり合う短編作品だ。城や歴史が好きな人。地方の静かな雰囲気を味わいたい人。切ない読後感を求める読者におすすめできる。