本作は、特攻隊として出撃命令を受けた男のお話です。
言葉選びや、汗やオイルの臭いの描写。
淡々と事実を並べる情景描写の合間合間の、ふとした仕草。
全体的に静かな音の中、エンジンや絶望する兵士たちの声。
そのすべてがリアルで臨場感がある。
のですが、それがもっとも際立つのはラストです。
自分にはラスト、一瞬だけふっとすべてが無音になったように感じました。敵兵のありありとした表情が見えることで、「彗星」というタイトルに相応しい衝撃力、悲劇的な物語の結末が明瞭に頭に思い浮かぶのです。
色々書きましたが、とにかく筆力の高さゆえ迫力を感じる短編だということです。
そして、その結末を思うと切なくもある。
お勧めです。
生還のための技術を叩き込まれてきた精鋭たちが、理不尽に「自爆兵器の部品」へと変えられていく絶望と葛藤が、息を呑むような筆致で描かれています。
美化された「英霊」の裏にある死への恐怖や悔しさがリアルに伝わり、胸が締め付けられるような重厚な読後感を残す傑作です。
特に「生かすための整備」が「殺すための調整」に変わる地獄の対比には言葉に詰まります。
いつもは怒鳴り散らす整備班長の川本が、涙を滲ませながら完璧にアツタエンジンを仕上げてくる場面。
お互いの職人としての誇りと、それが死へと直結してしまう残酷な現実の対比が非常に切なく心に刺さりました。