第166話 クイズは嫌だ~!
3階層に進み、優月達はその内装に戸惑う。
「なんで闘技場に海賊船が突っ込んでるんだ?」
「海要素は何処に行ったのかしら?」
優月とユノが言ったように、闘技場に突っ込む形で海賊船の先端が入り込んでおり、水路どころか3階層の何処にも水気は感じられない。
船首にはデーモンパイレーツが仁王立ちしており、海賊の帽子とカトラスを身に着けている。
「野郎共、乗リ込メ!」
その瞬間、デーモンパイレーツの背後に魔法陣が出現し、下っ端のデーモン達が続々と現れた。
「次はニケが闘うの!」
ニケが飛び出し、【
音速で動くニケの物理攻撃だから、その運動エネルギーが上乗せされてデーモンパイレーツ率いるデーモン達はあっという間に力尽きた。
「ハァ、ハァ…。勝ったの!」
「よしよし。ニケもちゃんと新しく会得した【
疲労感こそあるが、ニケは敵集団を徒手空拳のみで倒せたため優月にその戦果をアピールした。
本当ならば【
昨日新しく会得したアビリティを使いこなし、戦闘で上手く使ってみせたニケに優月はその頭を優しく撫でて労った。
ニケが満足したところで戦利品の回収を済ませ、優月達は4階層に移動した。
4階層は遺跡内部の闘技場のようであり、その中心にはスフィンクスが鎮座していた。
「全員注目!」
「そっちこそ~!」
「な、何ィ!?」
スフィンクスは【
「クイズは嫌だ~!」
「へぶぅ!?」
地球のシャングリラダンジョンでもスフィンクスと対峙したことがあり、ナギは【
ただし、流石に一撃では倒し切れなかったから、ナギは追撃として【
哀れなスフィンクスはウッキウキでクイズを出そうとしていたにもかかわらず、アピール力でナギに負けてクイズを出す前に倒されてしまった。
「ナギ、お疲れ様。クイズは相変わらず嫌いなんだ?」
「美味しいクイズならウェルカムなんだけどね~。ただ小難しいだけなのはノーサンキューだよ~」
ナギは決して馬鹿ではないのだが、クイズでいつ使うんだその知識とツッコみたくなるようなことを問われるのは嫌がっている。
若干不満げなナギを見て、優月はハグしてナギのストレスを解消した。
魔石を回収して5階層に移動すると、地下墳墓風の闘技場のど真ん中にポツンと棺が安置されている。
優月達が来たと察知したのか、棺の蓋が外れてその中から包帯だらけなのに傷が隠せていないデーモンが現れる。
「スカーデーモンだ。気を抜くなよ」
「我ヲ知ルナラ話ガ早イ」
スカーデーモンは【
変身した姿の身体能力やアビリティまで引き継げるが、ぶっ壊れ性能のこのアビリティがノーリスクで扱えるはずなく、発動中はずっとHPが削られていく。
しかも、変身先の存在と自分との差が開いていればいるだけHPの減りが加速するから、気楽に扱えるようなアビリティではない。
「変身なんてさせないわ」
スカーデーモンが【
すぐに力尽きると思いきや、スカーデーモンはHPを1だけ残して食いしばる。
「【
優月がそう告げた通りに、スカーデーモンはDK01に変身した直後に力尽きた。
いくら【
「ユノ、お疲れ様。良い判断だったよ」
「そうでしょ? じゃあ、はい」
「はいはい」
ユノが両手を広げて待機したから、優月はユノがハグ待ちであると察して抱き締めた。
優月からハグしてもらえたから、ユノはご機嫌そうに優月のことを抱き締め返した。
ユノの充電がバッチリ終わってから、優月達は魔石を拾って6階層の魔王に会いに行く。
そこには、両肩にドラゴンの頭骨の肩当を着けた中性的な悪魔がいた。
「ここまで来てしまったか。ならば、アーティストとして相手をしなければな」
「アーティスト? それはお前のことを言ってるのか、ウァラク?」
鑑定モノクルで悪魔の正体を告げた優月は、怪訝そうな表情を隠そうとしない。
どうして自らをアーティストと呼ぶのか、その理由を察してイラついたのだ。
「その通りさ。この両肩の肩当だけじゃわからなかったかい? それなら」
指パッチンしたウァラクの両腕にガントレットが装着され、両脚にはブーツが装着された。
そのガントレットの先端やブーツの先端には、いずれもドラゴンの骨が使われている。
「不快指数が増しただけだ。お前は俺が斬り捨てる」
優月はウァラクがドラゴンの骨を弄んだことを不快に感じ、オクタ・アナグラムを構える。
「剣を抜いたな? ならばこちらも抜かねば無作法というもの…」
礼を失するのは良くないと口で言うものの、ウァラクは指パッチンして自作と思しきドラゴンの牙を使った剣を嬉々としてこの場に取り出す。
「リオ、よく見てろ。翠嵐流の見取り稽古だ」
「うん」
優月が真剣な口調で言えば、リオは素直に頷いて観戦モードに入る。
勿論、攻撃されたらすぐに迎撃できるだけの備えはしており、あくまで見取り稽古の邪魔がされなければ観戦するというスタンスだ。
「壱式:疾風」
「…ふぅん」
壱式:疾風を優月が放てば、ウァラクは力強い横薙ぎで打ち破ろうとする。
「弐式:逆風」
「何ィ!?」
「漆式:勁風」
「ぬぐぅ!」
壱式:疾風への防御に気を取られていたウァラクは、優月が連撃で繰り返した弐式:逆風と漆式:勁風をまともに喰らってしまった。
【
傷を治して強者の余裕を見せたかったウァラクだが、力が上手く入らなくて困惑した表情が表に出る。
「どうしたよ? まるで体の感覚がチグハグみたいだな?」
「貴様、俺様に何をした!?」
「おいおい、さっきまでの余裕そうな態度はどうしたよ?」
ウァラクの感覚に違和感を生じさせたのは、優月が握るオクタ・アナグラムのせいだ。
相手の能力値を自由に入れ替えられる特性を使い、優月はウァラクの発揮できる力をチグハグにした。
これでは満足に体を動かせないから、ウァラクの余裕ぶった表情が消えたのである。
「ぐぬぬ…」
「ほら、よーく狙って攻撃して来いよ」
「おのれ!」
「參式:柳風」
挑発に乗ったウァラクが無理矢理斬りかかれば、優月は參式:柳風でその攻撃をくるりと回転して受け流し、そのまま遠心力いっぱいの横薙ぎでウァラクを切断した。
優月がリオの教材にするために手加減しているから、ウァラクは【
だがちょっと待ってほしい。
オクタ・アナグラムでMPも他の能力値と入れ替えた場合、ウァラクが【
「クソッ、俺様の芸術がこんな所で…」
「お前のそれは芸術じゃなくて冒涜だ。伍式:暴風」
これ以上はオクタ・アナグラムで操作しても限界だったため、優月は伍式:暴風でとどめを刺した。
肆式:旋風と陸式:腥風を披露できなかったため、優月はリオに謝る。
「ごめん、リオ。ウァラクが弱くて肆式:旋風と陸式:腥風まで見せられなかった。別の機会を設けるから待っててくれ」
「うん! 待ってる! 今見た技をもっと練習するね!」
「よしよし、愛い奴め」
リオは見せてもらった5つの技を先に会得すると宣言し、優月はリオの姿勢が素直で教え甲斐のあるものだったから、その頭をわしゃわしゃと撫でた。
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