第134話 このドラゴン、ミックスの第二世代だな

 ミズフスキーに戻った優月達は、竜希がタリアと遠征の条件をどのように決めたのか報告した。


「それで良いと2人が決めたなら、どちらかに過度に有利って訳でもないし俺は良いと思うぞ。それと、俺からも報告がある。ミズフスキーの西側に進んだ地点で、魔王の分体2体と遭遇して倒した。イポスとハーゲンティって名乗ってたな」


「私達が話している間に、魔王の分体を2体も倒したのですね」


「久世さん、瑞穂にダンジョンは6つあったんですよね?」


「7つあったようですが、マスストに大魔王プルソンが逃げて6つになりました」


 タリアはウェポニア全土でダンジョンがいくつあるのか気になり、参考情報として瑞穂はどうだったのか竜希に確認した。


 瑞穂の状況は優月に教えてもらっていたから、竜希は正しい情報をタリアに伝えられた。


「ドラガイアには72のダンジョンが巣食ってるとソフィア様から聞いた。ドラガイアが10の国からなる世界で、海底ダンジョンと空にもダンジョンがあるとするならば、1ヶ国7つのダンジョンがあると仮定して、ウェポニアのダンジョンは残り6つが目安だな」


「ブエルのダンジョンは使徒様方に踏破いただきましたから、確かにその計算で考えられますね。流石は使徒様です」


 優月の考えを聞き、タリアはすぐにそれを理解してヨイショした。


「煽たって何も出ないぞ。それにあくまで目安だ。国力に応じて大魔王や魔王の配分が操作されてる可能性は十分にある。久世と綾小路は魔王の分体が複数で襲って来る想定で動け。イポスとハーゲンティはスチュパリデスとクレタブルの体を乗っ取ってた。今のお前達で倒せるか?」


「私とトリスタンで片方を倒し、巫女様とリューマのサポートがある状態で竜奉学園の竜騎士団が戦えば問題ありません」


「怜、私とリューマだけでも1体倒せますよ?」


 竜神神社の世話になっていた時に経験を積んだから、竜希はリューマなら1体ぐらい倒せると抗議した。


「リューマは回復役ヒーラーでもあるのです。回復役ヒーラーは狙われやすいので進んで攻めに行かないで下さい」


「それで言うと私も回復役ヒーラーになるんだけど?」


「僕も」


「ユノ様とリオ様は例外です。ユノ様はオールラウンダーですし、リオ様だって使徒様が安全マージンを考えて戦う許可を出していらっしゃるのですから」


 怜は竜騎士として優月達をよく見ていた。


 ユノぐらいになると、ドラガイアではソフィアの次に強いため心配することが烏滸がましい。


 リオも優月が無理をさせない育成方針だから、絶対にリオでは手に負い切れない敵を優月はリオに割り当てない。


 竜希もそれをわかっているから、更に抗議するということはなかった。


 とりあえず、ミズフスキーでの話し合いは終わったから優月達は瑞穂に戻った。


 翻訳スピーカーを返してもらい、昼食を取ったら優月達は竜希や怜の強い希望で灯京にやって来た。


 2人が優月を灯京に同行を頼んだ理由は、現状の竜騎士団を見てアドバイスが欲しいからだ。


「使徒様、灯京にお越しいただきありがとうございます」


「進化したドラゴンがトリスタンとリューマ以外にもいると聞いたからな。態度を改めて強くなる努力するのなら、俺だって手を貸すさ」


 現在は過去の竜騎士団とは異なり、町の竜騎士団を決して侮らず、むしろ彼等のなんでも使う実戦的な戦い方を取り入れている。


 優月達は灯京竜舎前に集合した竜騎士団を見つける。


 (へぇ、斯波のドラゴンは進化したのか)


 かつて単独で優月に接触しに来た斯波は、怜が飛び級で卒業した後に竜奉学園の生徒会長を継いでいる。


 竜奉学園竜騎士団だが、最初から灯京にいた団員と各地から学びに来た団員との管理をしやすくするため、直近で以下のように再編された。



 灯京の団員で構成された一番隊


 東都地方の都市の団員で構成された二番隊


 東北地方の都市の団員で構成された三番隊


 北陸地方の都市の団員で構成された四番隊


 中部地方の都市の団員で構成された五番隊


 西部地方の都市の団員で構成された六番隊


 陰陽地方と四国地方の都市の団員で構成された七番隊


 八州地方の都市の団員で構成された八番隊



 各隊に竜奉学園の担当の教師が割り振られており、飛び級で卒業した怜は全体を率いる立場の団長であり、一番隊隊長は安賢生徒会長が担っている。


 竜希はあくまで巫女なので、団長や隊長等の指示系統の責任者ではなく、ご意見番的な役回りだ。


 もっとも、ご意見番の方が各隊長よりも騎竜は強いという事態に陥っていたりするのだが。 


「各隊長の騎竜が進化したようだが、特殊進化できたのはトリスタンとリューマだけらしいな」


「その通りでございます。いずれもカラードラゴンから通常進化しました。使徒様には団員の騎竜を鑑定の上、進化に向けた育て方をアドバイスいただきたいのです」


 優月が鑑定した結果を口にすれば、怜が優月達を連れて来た理由を述べた。


 団員達は優月のアドバイスを期待しており、自分の騎竜を強くしたいという目をしていた。


 都市のドラゴンは色名+ドラゴンの種族ばかりで、通常進化しただけでも強い。


 その中でもトリスタンは特殊進化し、ドラゴン十傑の一種であるジャバウォックになれたから、自分の騎竜にもワンチャンスあるのではと思っているのだ。


 優月は並ぶドラゴンを1体ずつ鑑定し、医者が処方箋を用意するように団員へアドバイスしていった。


 その中には彩玉出身の者がいた。


 彩玉は優月の心象が良くない都市だけれど、それは新漸にいざに使者として来た者のやり口が新漸を脅迫するようなものだったからだ。


 とはいえ、竜騎士として竜奉学園に学びに来た者を彩玉出身だからと言って弾くのは、この場においてフェアではない。


 だからこそ、優月は平等にアドバイスを行った。


 竜希と怜は優月の彩玉に対する感情を理解していたため、優月の懐の深さに感謝した。


 しかし、この場でそれに言及すれば、彩玉出身の竜騎士が下に見られてしまい、竜騎士団の風紀が乱れかねないので、2人は後でお礼を言おうと決めた。


 10体、20体とドラゴンを見てはアドバイスをしていく内に、優月は最後に見るべき1体のドラゴンの前で黙り込む。


 (このドラゴン、ミックスの第二世代だな)


 目の前にいるドラゴンはパープルドラゴンなのだが、この個体は第二世代、つまりはドラゴン同士の間に生まれた個体だった。


 レッドドラゴンとブルードラゴンの間に生まれたパープルドラゴンであり、他にも第二世代のドラゴンはいたがミックスのドラゴンはいなかったので優月の目に留まった。 


 他の騎竜はスパッとアドバイスを出していたが、自分の騎竜の時だけ静かになっているので主である女子団員は不安になって口を開く。


「使徒様、私のクロッカスは進化できないのでしょうか?」


「ん? そんなことはないぞ。別種のドラゴン同士の間で生まれたミックスの第二世代を初めて見たもんでな。しっかり鑑定してたんだ」


「あ、あの、クロッカスはミックスだったのですか?」


「知らなかったのか? クロッカスの父親と母親とは面識がないのか?」


 優月は女子団員の反応から、ミックスだったことを今知ったのかと呆れていた。


 無論、都市出身ゆえに町の竜騎士団とはドラゴンの主になる家庭が違うのかもしれないと予想していたが、第二世代ならドラゴンの親を気にするべきだろうとも思っていた。


「面識はございません。クロッカスの卵は亡き父が買い求めた物で、何処で手に入れたのか私には知る手段がなかったのです」


「そういう事情もあるか。それならクロッカスのことをもっと知っておけ。クロッカスはレッドドラゴンとブルードラゴンのミックスで、火属性アビリティと水属性アビリティの適性があるから、育成次第で蒸気や熱湯を使った攻撃も使えるようになるはずだ。均等に使っていけ」


「わかりました。進化先の候補を教えていただけますでしょうか?」


「通常進化先はヴァイオレットドラゴンだが、特殊進化先はスチームドラゴンだ。さっき言った通りのアドバイスで育ててみろ」


「ありがとうございます! クロッカスをスチームドラゴンに進化させてみせます!」


 女子団員は竜奉学園竜騎士団で3体目の特殊進化を目指し、気合に満ちた返事をした。


 用事が済んで優月達は竜神神社に帰るが、その女子団員はこの後学園内で注目されることになるのは言うまでもない。


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