第11章 竜騎士さん、瑞穂を出る
第101話 魔王って夜逃げするんですか?
ドラガイア生活45日目、西瑞穂にあったダンジョンが忽然と消え、ソフィアが調べるために待機していてほしいと言われたから、優月達は竜神神社の敷地から出ずに休養日にした。
翌日のドラガイア生活46日目、優月達はソフィアの神域に呼び出された。
今日は仕事のデキる女上司風のソフィアに対し、優月は調査が終わったのだろうと思って訊ねる。
「一体何が起きたんですか?」
「瑞穂に巣食う最後の魔王、プルソンがダンジョンを自ら始末して夜逃げしました」
「魔王って夜逃げするんですか?」
「私の管理下でこのような事態は初めてですが、プルソンは夜逃げしたと判断するしかありません。瑞穂にダンジョンの反応が感じられませんから、国外に逃げたと考えるのが妥当でしょう」
地球でもドラガイアでも、ダンジョンマスター本体がダンジョンを畳んで出ていく事態は初めてだったため、優月とユノ、ナギはその事実をすぐには受け入れられなかった。
もしもこの場にブラドがいたのなら、夜逃げするなんてダンジョンマスターの恥晒しだと憤慨するに違いない。
その根性もなく、不利だから逃げるという手段を取ったプルソンを見れば、ブラドは戦いから逃げるなと説教するに決まっている。
「こんなことになるとは思ってませんでした。じゃあ、俺達は西瑞穂の町を救いに行きますね」
「よろしくお願いします」
この日から3日間かけて、優月達は瑞穂の町を全て回った。
最初に
ドラガイア生活47日目に陰陽地方の
都市はさておき、全ての町の竜脈が活性化したことで竜神神社の神聖さが増し、転移魔法陣で瑞穂以外の国とも繋げられるだけの力が蓄えられた。
過密なスケジュールゆえに、ドラガイア生活49日目は休みにしたが、それでも50日かからずに瑞穂に現存する町を全て救援したことは偉業である。
「久世、瑞穂と友好的な国はあるか?」
「昔はグロウスと華国、フォーランドと繋がりがあったそうですが、それは3世代以上前の話です。瑞穂は島国であり、外国に行くには海を渡らなければなりませんから、国交は断絶状態ですね」
「そうか。次に行く国を決める参考にしようと思ったけど、それなら適当に近くの国から行くか」
最も瑞穂に近い国は華国であり、陰陽地方の町から飛んで行くのが最短距離だ。
優月達はどの国から助けても良いと思っているし、ソフィアからどの国を優先して助けるようにというお願いもない。
そうであるならば、竜希に優先して助けてほしい国がないか訊ねてみたが、特にないようだったので華国に決まった。
ドラガイア生活50日目、転移魔法陣で出藻に到着した優月達はナギの背中に乗って海を渡る。
ニケにドラゴンになってもらわなかったのは、華国に渡る時にニケでは厳しい可能性を考慮してのことだ。
海に出た瞬間、海面からはグサダーツの群れが飛び出し、上空にある雲の中から雨雲のような色をしたペリカンの群れが急降下した。
「ユノ、下は頼む」
「任せて」
優月はユノにグサダーツの群れへの迎撃を任せてから、狩魂剣キログラムの刃を霊体化して一気に暗いペリカンの群れを斬ってまとめて仕留めた。
ユノも【
光の壁に挟まれたままグサダーツの群れは窒息死を迎え、黒いペリカンの群れと同じくナギの【
(黒いペリカンはブラッパーか。食べられるなら、華国に行く時に丁度良いかもな)
グサダーツが食べられるのは知っていたが、ブラッパーは初見だったので食べられるのか鑑定してみないと優月もわからなかった。
瑞穂の町を救援した時も、食糧不足で困っている町は多かったから、華国に持ち込める食料は多いに越したことがない。
「ユノ、フォローしてくれて助かったよ」
「優月の助けになれて良かったわ。それにしても、瑞穂を出てすぐに攻撃を受けるだなんて、私達は警戒されてるのね」
「瑞穂から魔王が逃げ出すくらいだから、外国の魔王に注意喚起して回ってるのかもな」
魔王を統べる大魔王達が裏で連絡を取っていたなんて知らないから、優月達は瑞穂の外に出ただけで奇襲を受けた理由を推測するしかない。
とりあえず、グサダーツの群れとフラッパーの群れの対処を終えて飛び続けていると、華国がある大陸が見えて来る。
華国は北にウェポニア、西にマスストと隣接している。
同じ大陸にある国々の国境には、境界線をわかりやすくするための長城が建設されているのだが、
「優月~、海の中から何か来るよ~」
「確かに来るな。えっ、待って。デカくね?」
「こんな大きい個体なら食べ応えありそ~」
ナギが察知した敵を見てみれば、それはシーサーペントだった。
ただし、優月達が見たことのない大きさだったので、ナギは食料として期待ができると喜んだ。
「ナギ、いつものを頼む」
「任せて~」
【
「しっかり捕まっててね~」
「「了解!」」
「わかったの!」
ナギがやろうとしていることを察し、優月とユノがナギにしがみつき、ニケは優月にピタッと抱き着いた。
ムーンソルトキックの要領で、尻尾でシーサーペントの顎下を殴りつければHPを削り切れた。
【
「ん? まだいるか?」
「高度を上げるね~」
海中からまた何か出て来るようだと気づき、ナギは高度を上げて迎撃態勢に移る。
その直後に派手に水飛沫を飛ばし、骨だけになった海竜が姿を見せた。
「パラサイトスカルの希少種か?」
パラサイトスカルとは、生物の骨に寄生するモンスターだ。
通常は他のモンスターの骨に寄生し、竜騎士と騎竜を襲うのだろうが海から現れたのは騎乗したまま骨になった竜騎士とドラゴンだった。
「酷いことするわ」
「焼肉定食~?」
「美味しそうなの」
「それを言うなら弱肉強食じゃね?」
ユノは不愉快に思っており、ナギは弱肉強食を勘違いしてニケはそちらに反応してしまった。
パラサイトスカルに食べられるところはないから、ユノが容赦なく攻撃を始める。
「安らかに眠れ」
狩魂剣キログラムの刃を霊体化し、優月はそれを伸ばしてパラサイトスカルを突き刺す。
魂が破壊されたことにより、パラサイトスカルは力尽きた。
海にパラサイトスカルが沈んでしまえば、別のパラサイトスカルに利用されかねない。
そうならないように、ユノが【
砂浜が見えて着陸しようとしたところ、砂浜にはカルキノスの群れが待機していた。
「ニケ、凍らせちゃって良いぞ」
「はいなの!」
優月に指示を出され、ニケはドラゴンの姿に戻ってから【
基本的にそれだけで倒せたのだが、1体だけ氷に耐性がある個体が混じっていたようで、凍った体を内面から温めて氷を融かし始めた。
「もう、おとなしく凍ってれば良いの!」
ニケは凍っている状態から抜け出そうとした個体に接近し、先程のナギのようにムーンソルトキックのような尻尾の一撃を喰らわせた。
「へぇ、倒した時から茹でられたみたいになってるじゃん」
「茹でなくても食べられるって訳でもないでしょ」
「優月が茹でてくれないと美味しくないよ~」
「中途半端に茹でたのは嫌なの」
不思議な変化を見て興味を持つ優月達だったが、ナギの【
ナギとニケが着陸して人の姿に戻ったら、戦利品をテキパキと済ませた。
なかなかに手荒い歓迎をされたけれど、優月達は無事に華国の地面を踏むことに成功した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます