かつての恋人・拓海への「憎しみ」をガソリンにして都会で走り続けてきた主人公・美咲が、彼の死と遺されたスケッチブックを通じて、十年越しに隠された愛の形を知る物語だ。視力を失いゆく恐怖の中で、美咲の未来のためにあえて「悪役」を演じて別れを選んだ拓海の孤独な決断が、極彩色の情景描写と共に切なく描かれている。失われた色彩を取り戻し、再生へと向かう美咲の心理的変化が本作の大きな魅力である。
切ない「自己犠牲的な愛」や、過去の真実が明かされるミステリー要素のある恋愛ドラマを好む読者。情景描写(特に光や色)から登場人物の感情を読み解く、情緒的な読書体験を求める読者におすすめできる。