第18話
優しく頭を撫でられている感覚があった。
温かな手のひらが髪を梳き、サリスは眠ったまま小さく息を吐く。
その様子に気づいたらしく、撫でている人物が短く息を漏らす。
くすぐったさに、サリスの口元がわずかに緩んだ。
だが、その手はやがて頭から背中へと移動し、必要以上に長く留まった。
撫でるというより、確かめるような動き。
無意識のうちに、サリスの身体がこわばる。
「……ん……」
眠りの浅瀬で、小さく声が漏れる。
不快ではない。だが、安心とも言えない。
背中をなぞる手は、ゆっくりと腰へと下りていく。
その動きに、胸の奥がざわついた。
理由は分からない。ただ、近すぎる。
サリスは薄く目を開ける。
視界に入ったのは、知らない顔だった。
優しげな表情、柔らかな物腰。年若く見えるが、見覚えはない。
「……目、覚めちゃった?」
低い声が静かに問いかける。
逃げようとするが、身体が動かない。
押さえつけられているわけではないのに、距離が近すぎて身動きが取れなかった。
サリスの胸に、遅れて恐怖が広がる。
(この人、誰……?)
主人のいない時は、命令に逆らってはいけない。
そう教え込まれてきた思考が、反射的に身体を縛る。
男は微笑みを崩さないまま、囁く。
「そんなに怯えなくていいよ。
ほら、震えてる。……まるで、迷子の子猫だ」
言葉は穏やかだが、距離は縮まらない。
逃げ場はない。
サリスは唇を噛み、声を飲み込んだ。
助けを呼ぶ方法が、分からなかった。
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