多かれ少なかれ、人間はその社会の歪みの影響をどこかで被っている。
歪みのおかげでなに不自由なく暮らせる人間もいれば、歪みのおかげでなにひとつうまくいかない人もいる。
作者の祖父は太平洋戦争の……戦前、戦中、戦後の歪みとともに生きてきたように思える。
イエの存続、軍隊、農地改革。
戦争がなければ、カネには困らない態でうまいこと飼い殺し……イエの本流からは追い出され、実子の次男が家督相続した裕福な家の「道楽息子」で終わっていたかもしれない。
それが幸せな人生だったかどうかは分からない。
が、戦争がここでも影を落とす。
さらに彼の人生の陰影を濃くする方向で。
彼の人生を、この文章を追っていく……それだけで評価すれば「ろくでなし」だろう。
とはいえ、作者が祖父のことを嫌い抜けない、そんな理由も、この文章には滲んでいる。
ファミリーヒストリーの良作。