第13話 またね


 30分だけだったが、花凛と話すことが出来た。

 動画のことを話しただけで終わってしまった。

 

 それでも歌を褒めてくれて、笑顔を見れて嬉しかった。

 何故か日常を撮った動画も喜んでくれた。

 欲を出すと花凛ともっと話したいけど、無理をさせてはダメだ。

 それでこの30分も無くなるのは嫌だ。


 ヴィンガードのアニメで花凛が好きなキャラクターのコスプレをして、アニメのカッコイイシーンを再現してみた。

 相手役は皐月にした。

 悪役をさせるなら、木立よりも皐月の方が似合っていた。


 アニメのような演出は出来ない、編集でも限界はある。

 それでもやってみた。

 恥ずかしかったが、花凛のためにと頑張った。

 途中から楽しくなって、かなりノリノリで撮っていた。

 

 



 そうして時間は過ぎて行き、ついに花凛とお別れの時が来る。


「明日旅立つわ。花凛があんなに元気に笑っているのはライト君のおかげよ。本当にありがとう」


 朱日先生が頭を下げる。


「俺こそ花凛のおかげで、その……よくなったんだと思います」


 日常の動画を撮って映像を確認すると、施設に来たばかりとはかなり違う生活をしていると気付く。

 どちかが良かったなんて俺でも分かる。


「外科先生に頼んで特別に多く時間をもらったわ。花凛のこと、ちゃんと送り出してあげて」


「はい、ありがとうございます」


 俺は先生に案内されて、病室に入った。

 

「よぉ、元気だったか?」


「うん、ライト君も元気そうだね」


 俺はいつも通りでいるようにした。

 悲しい顔したら、花凛を心配させてしまわないようにだ。


「明日アメリカに行くんだよな?」


「うん。ライト君に会えないの……寂しいな」


「俺もだ、花凛ともっといたい」


「向こうで病気治したら戻ってくるから、そうしたらまた話したりカードしたりして遊ぼう」


「花凛に負けないぐらい強くなる」


「運動も出来るようになるから、野球やサッカーをやろう」


「あぁ、花凛に教えられるぐらい上手くなる」


「楽しみだね」


「俺は花凛が好きだ」


 俺は今まで言おうか迷っていた。

 でも伝えなきゃだめだと思った。


 花凛は驚いた顔をして、泣きそうな顔をする。

 俺みたいな体のやつじゃだめだったか?


「ごめんね。嬉しいの……私、こんな体なのにライト君に好きって思われて嬉しい」


「俺だって子供を産めさせてやれない体だ。こんな男に好きになられて迷惑じゃないか?」


「そんなことないよ。すごく嬉しいよ」


 俺は花凛に抱きついてキスした。


 どれくらい接していただろう。

 数秒か数分か分からないけど、ずっとこうしていたかった。

 顔を離して、花凛を見つめる。


「動画を撮り続ける。花凛のために、向こうでも元気でいて欲しいから。動画を送る」


 花凛は首を横に振った。


「ありがとう。でも男の人のものを送るって凄く厳しいんだ。海外だと届かないかもしれないんだ」


「そうなのか」


「だからTheyTubeにあげて、そうしたら見たい時にライト君を見れるから」


「わかった」


「それにあんな素敵な動画、独り占めしちゃ悪いよ。みんなに見てもらおう。ライト君ならすぐに人気ものになるよ」


「あれは花凛のための動画だ。お前が独り占めしていいんだ」


「ありがとう。でもその方がきっといいから……お願い……」


「分かった。そうする」


「うん。ありがとう」


 その後俺たちは制限時間までいつも通りの会話をして過ごした。

 また明日も明後日も会えるかのように。




 翌日。

 空港へ向かう花凛を見送りの時が来た。


「元気になって帰って来るのを待ってる」


「必ず帰ってくるよ。またね」


 花凛を乗せた車が走り出して見えなくなるまで立っていた。


 さぁ、今日も授業を受けてレッスンをしよう。

 花凛との約束を守るために。


 また会おうな、花凛。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

男女比の狂った世界で【種無し】となった俺は引き篭もりオタク配信者となる。 赤松つみき @akamatsutsumiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ