小夜と彰人の間に流れる言葉を超えたコミュニケーションの密度が、物語全体に気品を与えていたように思います。耳を塞いで、心で聴きたくなるような物語でした。 文体そのものが、大正の空気感を纏った美しい硝子細工のようで、一文字ずつ大切に読み進めたくなる作品です。
音が消失した世界で生きる少女と、言葉の海に溺れる翻訳家。二人の距離を繋ぐのは、声ではなく「皮膚感覚」と「光の移ろい」です。大正ロマンの香気漂う端正な筆致で、触れられぬもどかしさが、筆圧による刻印や針穴を通る光といった「物質的な愛」へと変質していく過程が圧巻です。
描写の細部にこだわった、とても綺麗な物語でした。「指先」というモチーフが、第一話から最終話まで一貫して「境界線」として機能しています。官能的で清廉な距離感、触れるか触れないかの数ミリメートルの断絶を、海よりも深いと表現する感性に、二人の住む世界の切実さを感じました。 キャッチコピーの「あなたの指先が、わたしの言葉でした」が、単なる比喩ではなく、物語の結末において物理的な真実として昇華される構成はお見事です。 タイトル通り、美しく、そして壊れやすい硝子細工のような繊細さに満ちた作品でした。
本作は「音」を物理的な振動や光、そして「筆圧」という触覚に変換して描写している点がとても美しく、秀逸な物語。 タイトルが示す通り、壊れやすく儚い世界観が、最後まで一貫した美しい日本語で綴られていました。 キャッチコピーの「あなたの指先が、わたしの言葉でした」という言葉が、物語を読み終えた後に何倍もの重みを持って心に響きました。