とある山奥に位置する仁朗村。そこには普段は人間の姿をしている人狼たちが暮らしている――。
馬の被り物をした謎の人物が飛び入り参加する中、村内会議が開始されます。人狼ゲームでも始まるのかと思いきや、展開は意外な方向へ。
人狼ゲームが始まるのかなと思ってしまったことそのものが偏見だったのだと気づかされました(笑)。村の人狼たちはきちんと理性を持った人物たちなのですが、いかんせん人狼という存在ゆえに人間から迫害・侵害されることもしばしば。
どこからともなく現れて馬の被り物をしている変人に、思わずクスリと笑わされるシーンも多々。コメディとシリアスのバランスが絶妙でした。シリアス(?)なのかな。分かんないけど。
人狼だけの村が存在したら一体どうなってしまうのか。そんなifを楽しんでみたいという方にオススメの一作です!
人狼村会議録は、怪談の顔をした自治会劇だ。人狼が棲む仁朗村で「定例会議」が始まるのに、場に入ってきたのは馬のかぶり物のよそ者である。村長の上尾が冷静に退席を促しても、馬は空気を読まずに居座り、書記の古宇がついに人狼へ変じて追いかけ回す。机と椅子が乱れ、抜け毛が舞う中、上尾が「もう、このメンバーで始めます」と切り替え、古宇の隣に馬の席まで用意する場面は、笑いの勢いが会議の形式そのものを転がしていく。古宇のメモに走る「馬殺す」の一語まで含めて、筆致が乾いていて、だからこそ可笑しい。
前編で笑わせたあと、後編は同じ村を別の角度から照らす。鶏舎事件と報道の偏りが残した傷、観光目当ての来訪者が捨てるゴミや無断侵入、さらに子どもたちが撮影や接触の対象にされる現実が、上尾の言葉で一気に噴き出す。外から貼られる「危険」の札と、中で踏ん張る暮らしの温度差が、会議録という枠にきれいに収まっている。2話完結なので、軽快さと後味の苦さを続けて味わえる。作者の狙いは、怪物の話で人間の粗さを映すことにある。
人狼村における会議。
それは、村人の中に紛れている人狼を、会議の中で探し、相手の言い分に違和感、矛盾、そして時にはブラフを織り交ぜて見つけ出す……というものなのですが、
この話はそういう話じゃないんですね。
なんというか……全員人狼です。
だって自分でそう言っちゃってるんだから、そうなんです。考えてみたら仁朗(人狼)村。人狼が住んでて然るべき村なわけでして。ええ。
だから犯人(人狼)探しもしなくていいし、普通に村の収支とかガードレールの交換とか、そういう平和な会議をすればいいんじゃない?
……というわけにもいかず……
会議の参加者に明らかにツッコミどころのあるやつが紛れているのですよ。
だからなんというか……状況があべこべなんですよね。
人狼の中にいる村人を探せ……と言ったって明らかにおかしいから探す必要もない。
何しにきたん!? あんた!!
そして人狼たちが平和に村に関わる会議をしていたら、
「お前らはそんなんじゃない!!」と駄々をこねる始末。
果たして、こいつは一体……?
そして、一体何をしにきた?
というミステリー大作にございますな。
話は大きく脱線するのですが、
人狼はその昔、スパイゲームっていう名前だったんですよ!
一般人に紛れているスパイを探すっていう面白いゲームだったのに、
人狼とかいう妙な設定が加わったせいで、殺すだの追放するだの、ややこしいやつは出てくるわだの……。
俺はスパイゲームが好きだったのに!
ああ、全く関係ないことを書いてしまいました。
この先生特有のワードセンスが光る良作です。
ご一読を。
「人狼」で「村」ときたら、推理ゲームでお馴染みの「汝は人狼なりや?」が思い浮かびます。
きっと本作もそのオマージュで、様々な証言から推理をし、紛れ込んだ部外者を追い詰めるというミステリ要素の強い作品なのかな、と思って読んでみると。
はい、そうなんです。
本作、「現代ファンタジー」であって、「ミステリー」ではないんですね。
なので、初手で思いっ切りその洗礼を受けました。
お、お前ーッ!
いきなり何ちゅうもんを!!!!!!!
そしてお話は、意外と切実な人狼たちの村が抱える問題について広がっていきます。
これに関しては、我々リアルの人間側にもいろいろと考えさせられるものがあるなぁと。
かと思えば、またもちゃぶ台返しの如く色々ぶっ壊してくれます。
人狼村はもはやしっちゃかめっちゃかです。
何だ、このセーフティレバーのないジェットコースターにでも乗っているような感覚は!?
ただ一つ言えることは、異種族との相互理解はなかなかに難しいということです。
……いや、これ初手で色々間違えてるからこうなったんじゃねぇかな。
終始驚かされ、そしてゲラ笑いさせられる本作、是非ともお楽しみください。
人狼が住むことで有名な「仁朗村」。
村名が示すとおりに仁に篤く、朗らか――――日が沈むまでは。
夜に危なくなるのは仕方ありませんね。生態ですから。
ですが、昼間の滞在は無問題。ここにしかないホスピタリティで魅力たっぷり。
――――おっと、いけませんね。
夜に開かれた内輪の会議。
紛れ込んだのは、あきらかに村外の存在。
無邪気なフリをしてシレッと混ざっていますが……バレバレです。
このフワーッとした雰囲気は作者様の伝家の宝刀。
クスクス笑って読み進めてもらって――――おや?
明かされる事情は、人狼側と乱入者側と、それから……
悪いのって、いったい誰なんでしょうね?
ご一読を!
この圧倒的なほのぼの感……なようなパニック感がとにかく楽しい作品でした。
人狼。それは「人狼ゲーム」にも代表されるように、こっそりと人に化けて次々と誰かを手にかけていく邪悪な存在、と描かれることが多い存在ですね。
でも、この仁朗村に住む人々(?)は人狼は人狼でもよい人狼さんたちです。
村長の上尾の他、古宇たちは人間に迷惑をかけずに生きていましたが、そんな人狼さんたちの村になぜか「馬の面をかぶった存在」が紛れ込みます。
怪しすぎる! 明らかに。
そいつはどう考えても人狼とは別種の「余所者」と思われるのだけれど、なぜか人間の臭いがしない。では、一体相手は何者なのか。
実は観光地化している仁朗村や、観光客のマナーの悪さにむしろ迷惑をかけられている現状とか、「やっぱり人間の方が色々と厄介」な状況が見えてくるのも面白いポイントでした。
果たして、「人狼たち」を困らせている「馬」の正体とは一体……。
「人狼ゲーム」の世界では、「人狼(特殊)と「人間(普通)」との対立構図ができていた。
でも、彼らは忘れていたのかもしれない。
世界に「普通じゃないもの」が一つあるなら、実は三十体くらいは他にも普通じゃないものが混じっているかもしれない真実を……。
特別であることを持て余していた人狼たち。彼らの右往左往具合が面白い、素敵なファンタジー作品です!