いくつか読ませていただき、どれも洗練されていて面白かったです。
その中で、お気に入りの「ホラー小説【閉店セール】」
についてレビューさせていただきます。
雑居ビルの一角に、一夜にして現れた奇妙な店。
そこで売られていたのは、服でも雑貨でもなく、完璧に整った「身体のパーツ」でした。
驚くべき安値で提示される、理想の顔、理想の肢体。
自らのコンプレックスを削ぎ落とし、理想を買い求めていく主人公の無邪気な欲望。
痛みもなく、ただ鮮やかに「自分」が作り替えられていく過程。
その高揚感の影で、店員が淡々と進める「在庫処分」の真意に、まだ気づくことができません。
すべてを手に入れ、「完全な別人」に生まれ変わった翌朝。
突きつけられる現実は、安さの代わりに失った、あまりにも残酷な「代償」でした。
最後に残された張り紙の言葉を読んだとき、あなたは背筋が凍るような納得感に襲われるはずです。
「完璧な美しさ」の裏側に隠されていた、ゴミ箱に捨てられないほど重い、ある「事実」の物語。
一気に読み終えた後、鏡を見るのが少しだけ怖くなる。
そんな、洗練された恐怖が味わえる一編です。
読み始めてまず感じたのは、「一話完結なのにこんなに世界が違うの?」という驚きでした。虫松様のアイデアが詰まった作品集で、まるで発想の源泉をそのまま覗いているような感覚になります。
SFやホラー、恋愛にコメディまで振り幅がとても広くて、次は何が来るんだろうとページをめくる手が止まりませんでした。それぞれ短いのに、ちゃんと余韻やテーマが残るのがすごいなと感じます。個人的には、軽い気持ちで読んだはずなのに、ふと考えさせられる瞬間があるのが印象的でした。
いろんなジャンルを少しずつ味わいたい人や、「次に何が来るかわからない感じ」を楽しみたい人には、ぜひ手に取ってほしい作品集だと思います。