こもりうた

「るか…まぶしい」


「…うん」

 白を背負ったるかの表情は分からないけど、どこか恍惚とした声。


「閉めて」

「ごめん」


 黄色を取り戻した視界にはどこか物足りなさが残った。

「くらいでしょ?でんきつけよ」

「いい」

「そ?」

「うん」

「そんなに見つめられちゃうと穴があいちゃいますよー」

「うん」

「まあまあすわりなさいな」

「うん」

 ことばだけはしゅしょーなんだから。

 うごけー。

「どうした?」

「ベース」

「ん?ああこれね…いやー、くんじゃったじゃん?バンド」

「…後悔してる?」

「…違うよ…そういうのじゃない」

「よかった」

「そうだ!るかのうらぎりものー」

「……」

「わかっててりあにいったよね?」

「…」

 立ったままのるかの表情から真意は読み取れない。

「まあいいんだけどー」

「…うん」


「そんなにねつれつだと照れちゃうってー」

「てれて?」

「はははーナニソレ?」

 どうしても動かないらしい。


 今日はここまでですな。


 シールドを抜いて立ち上がる。

 手入れをしてケースに納める。脂がのこったらたいへんだー。

 正直名残惜しいけど初日だしこんなもんだろう。うんこんなもん。


「これ」

 ウッドラインちゃんをクローゼットにしまうと背後で何やらゴソゴソしてたるかから押し付けられてしまう。


 Gibson L-00 Ebony


 楽器店でるかにわたしが提案すると普段の物欲の無さを盾に両親を説得して翌日には手にいれてたアコースティックギター。


「るかさん?どしたの」

「どうぞ」

「なになに?わたしがもつの?」


 小ぶりな黒をわたしに持たせるとスタスタと自分のベッドに潜り込んでしまう。


「るかさーん…ねちゃうの?」

「こもりうた」


 ……弾けって?


「ギターなんて何年も弾いてないですよー」

「いい」

「るかさんのがジョーズですよ?」

「いい」


「…もー…あまんえんぼさんめ」

 わたしも自分のベッドに腰掛ける。

 咳払いをひとつ。


「それでは東雲雪菜から宵町月架にささげるこもりうたです」


 そうだなぁ。

 今夜の月に満たされた海面

GM7(9) / EbM7(#11)

 うん。ギターも以外にいけるじゃん。


 鎌倉の波音

Gm9 /Gb7(-5) /F13

 いいね


 私の証明

G Add9 / C Add9 / G

 一弦ずつ丁寧に



 弾くほどに血流が巡って脳が冴えていく。

 

「ねえ、るか音楽ってびようにいいかも」


 暗闇に溶けた声に返事は無かった。

 

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