犬人間。タイトルからしておぞましいこの作品を読み進めるほどに、まさに作中の深く、暗い地下室へと下りてゆくような気分に囚われてゆく。その底の空間に存在したもの。それはかつての惨劇か、おぼろげな推測しか見えぬ暗闇か、それとも、二十年余りにわたる妄執の牙か。この作品は、まさに奈落への降下である。