第19話
(今の俺を見たら、ティアは怖がるだろうか)
自分は優しくはなく、目的のためなら手段を選ばない。
ティアは純粋で、穢れがなく、心も身体も真っ白だ。
レミィはカルラ、いや、エメラルドの洋館に居候の身であり、寝泊まりも一緒だった。
気を失ったティアが心配で、目覚めるまで付きっきりで側に居た。
ティアが目覚めた夜、レミィはソファーをベッドにして寝ようとした。
獣人ではあるが、立派で可愛い一人の女の子であるティアにベッドを譲るのは当然だと思ったからだ。
しかし、ティアは不思議そうに首を傾げた。
「レミィ、ここで、ねないの? ふかふかだよ?」
「……俺はここでいい」
年端もいかない、幼く無垢な女の子に、男だから、とか女だから、とか言いにくくて、ティアから視線を外し言葉を濁した。
その様子を見て、ティアは寂しそうに耳と尻尾をしょぼんとさせた。
「ティア、レミィと、いっしょが、いいなぁ。さみしい」
その声はあどけなく、愛おしい。
レミィは柄にもなく胸をきゅんとさせた。
そして、ティアを可愛がりたくなり、ベッドに入ると彼女を後ろからぎゅうと抱き締めた。
ティアは嬉しそうな声をあげて笑った。
聞いているだけで、レミィの心が軽くなるような澄んだ笑い声だった。
「……おやすみ、レミィ」
「ああ、おやすみ、ティア」
ティアの身体は、ぬくぬくと温かく、心地よかった。
安心したように目を閉じて眠るティアの寝顔を、しばらく見つめていた。
(本当に、俺らしくないな)
ティアと一緒にいると、自分は優しい人間になりたくなる。
不思議だ。
セシルが見たら、なんて言うだろうか。
「……大丈夫ですか? 傷が痛む、とか?」
急に黙り込んだレミィを見て、ジェイが眉を寄せ、心配そうに声を掛ける。
「なんでもない……その本、少し見せてくれないか?」
「ええ、いいですよ。どうぞ」
ふと、ジェイが持っている本を見て、レミィは驚いた。
本を借りると、パラパラとページを捲る。
やはり、この本だ。
かつて探していたが、なかなか見つからず諦めてしまった本。
「探していたんだ、この本」
「そうなんですか? 私もまだ読んでいる途中なので、今は貸せませんが……読み終わったら貸して差し上げますよ」
「本当か? それは嬉しい」
レミィは本を返し、ジェイの申し出に、ふっと微笑んだ。
「さてと……こいつを引き渡しに行くか」
レミィはロブの手首を後ろ手に縛り、担ぎ上げる。
重力を軽減させる魔法を取得していて助かったな、と思った。
レミィとジェイは店を出て、警備隊の本部へと向かった。
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