滅びた地球に残されたひとりの少女ユナと、スマートフォンに宿るAIのマリーが紡ぐ、ポストアポカリプスの物語。本作は「祈りとは何か」という問いを、死という終わりを起点に銀河規模で追いかけていく。
舞台はスケールの大きな本格SFでありながら、科学を細かく説明するタイプではない。詩的で哲学的で、時にスピリチュアルとも感じられる詩的表現は、あえて答えを明示せず物語の中で描かれていきます。読者に解釈の余白を残し、読み終えた後も静かに余韻をお楽しめます。
物語が進むにつれて視点は次第にマリーへと移っていき、祈りが魂へと昇華されていく中で、記憶とデータとは、文明とは、生命とは何かが丁寧に積み上げられていきます。
マリーの語り口の変化や、ユナの想いと魂の描かれ方はとても印象的でした。迫力のある戦闘シーンもあり、エッセンスは多いのに話はよく整理されていて、読みやすさと余韻が両立しているのがとても魅力的な作品です。
常識の尺度を壊してくれる宇宙の広さと理。それに触れたいと思う方に、迷わず薦めたい一作です。
滅びた地球に残された幼い少女ユナと、スマートフォンに宿るAIマリー。ふたりの時間はあまりに短く、けれど、その別れは「終わり」ではなく、マリーにとっての「始まり」だった。
本作の良さは、舞台はスケールの大きなSFでありながら、焦点が常に“ひとつの声(ユナ)”に引き戻されること。
ナウルとの出会い、曇天に向けた祈りの静けさ、そして別の管理AIとの対話で突きつけられる冷たい合理——そこに、祈りが作り出す「誤差」の美しさが浮かびます。
無機質な環境の繊細描写と、冷たいマリーの語り口と、あたたかい感情の比喩が同居する文体が印象的。いくつかの死を乗り越えて”成長する”マリーの姿に、悲しみではなく、切なさと胸を打つ強い余韻があります。
終末SFが好きで、静かに沁みる物語を求める方に強くおすすめします。