滅びた地球に残された幼い少女ユナと、スマートフォンに宿るAIマリー。ふたりの時間はあまりに短く、けれど、その別れは「終わり」ではなく、マリーにとっての「始まり」だった。
本作の良さは、舞台はスケールの大きなSFでありながら、焦点が常に“ひとつの声(ユナ)”に引き戻されること。
ナウルとの出会い、曇天に向けた祈りの静けさ、そして別の管理AIとの対話で突きつけられる冷たい合理——そこに、祈りが作り出す「誤差」の美しさが浮かびます。
無機質な環境の繊細描写と、冷たいマリーの語り口と、あたたかい感情の比喩が同居する文体が印象的。いくつかの死を乗り越えて”成長する”マリーの姿に、悲しみではなく、切なさと胸を打つ強い余韻があります。
終末SFが好きで、静かに沁みる物語を求める方に強くおすすめします。