今回も最後まで読ませていただきました。
この物語が残す読後感は、自分の手のひらの温度をぼんやりと確かめてしまう……というのがしっくりくると思いました。
今作の魅力は「温度」というモチーフです。
星詠おばばが口にした「温もりは、命がそこにあったという証拠」という一言が、最後の祠の場面まで機能していると感じました。
これは伏線というより、最初から「世界の法則」として描かれていたのだと理解しました。
私が最も心を掴まれたのは、洞穴の場面です。
星羅が「押し返す力」こそが強さだと信じていた認識が、子犬の舌が掌を舐めるという、ただそれだけの接触で敗北する。
あの場面の「余白」が、この物語の中で最も印象的でした。
剣も呪いも使われていないのに、世界が続いている。その事実だけを書く手つきが、作者様の誠実さだと受け取りました。
また、危機を最適解で処理した直後に、星羅の内側に残る「遅れて引っかかる」感覚の描写。
そこでは、私自身の呼吸まで浅くなるようでした。
合理的な正しさと、温度の欠損が同時に存在するあの数行は、この作品の文体が持つ「静謐とはこういうものぞ」という力が最も凝縮された箇所です。
星羅とカムイが歩き出した先の温度を、知りたいと思うような作品でした。
生き物が石になってしまった世界で修行する女の子の話です。ただし、この小説は、ストーリーを楽しむなんて生易しいものではありません。まずは作者様の熱量を感じること。一文読んだだけで、その迫力が伝わってきます。言葉選びをどれだけ大事にしているのか、この文章一文書くのにどれだけ時間をかけているのか。そんな迫力がにじんでくる小説です。なので甘い考えでさらっと読んだだけでは、何が書いてあるかがわかりません。作者様は、恐ろしく頭のいい人だと思います。ただ、その明晰な頭脳に、私たちが置いてきぼりにされてしまうのです。
でも、ふと思ってしまいました。この天才的な頭脳を持つ作者様が、研究者向けではなく、中学生向けの文章を書いた時、そして、中学生向けのストーリー展開にした時、それはそれでものすごい名作が生まれるのではと⋯⋯。そんなことまで考えてしまうような高尚な世界観が漂う素敵な物語です。皆さん、読む時は心して臨んでください!
本作は、星霊ネビュラという不思議な存在と“温度”を通して、命と世界のあり方を描くSFファンタジーです。
戦いや勝敗を軸にした物語ではなく、「守るとは何か」「生きているとはどういうことか」を、詩的で静かな文章で問いかけてきます。
主人公・星羅の成長は派手ではありませんが、一つひとつの出来事が確実に心に積み重なっていく構成がとても印象的です。
特に、“正しさ”よりも“揺らぎ”を大切にする視点は、読んでいて深く考えさせられました。
専門用語やSF設定はありつつも、物語の核はとても人間的で、温度・呼吸・触れる感覚といった身近な感覚で描かれるため、難解さよりも温もりが残ります。
静かな物語が好きな方、哲学的なテーマを含んだ作品を読みたい方には、ぜひオススメしたい一作です。
読み終えたあと、きっと「自分の体温」や「誰かと並んで歩くこと」の意味を、少しだけ違う目で見られるようになるはずです。