料理初心者の雪象が料理を作る。その中で感じたあれこれや小さな失敗を経て「ごちそうさまでした!」に至るまでを綴るショートエッセイ集。
普段何気なくしている料理ですが、だからこそこんな観点があるのか……! とまず驚きましたよ。乱切りの乱ってなに? サバを焼くときの上下って? などなど、雪象さんの疑問やとまどいはすべてがもっともです。
そしてその表現が実に趣深いのですよねぇ。童話のようなやさしい言葉がなんとも心地よくて、うまくできない話はほほえましくて、時にちょっと起こったりズルしたりもするけれどそれもまた愛おしくて。技に開眼する姿は頼もしい――そうそう、便利グッズの紹介もありがたいのです。
読めばちょっとがんばって料理がしたくなる! という効能はもちろんあるわけですが、ゆるふわな空気感はむしろ今日はこんなふうに力抜いちゃおうかな。と思わせてくれる。それこそが本作最大の魅力であるものと思うのです。
料理と向き合う緊張感や倦怠感をふわっとゆるめてくれる、あたたかいスープみたいなお話です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)