誰だって、冷たいビルの風に吹かれれば、暖かさを求めてしまう。
語り手は、戻れなくなるかもしれない扉を、うっかり開く。
辿り着いた先で出会うのは、人に慣れたねこたちだ。
距離を測るような視線、気まぐれな動き、ふいに預けられる重み。
特別なことは何も起こらないのに、その仕草や温度が、不思議と意識をそこに縫い留める。
ねこをよく知らない語り手の戸惑いも含めて、その描写はどこか可笑しく、やさしい。
読み終えたあとに残るのは、確かな温もりと、少しだけ現実に引き戻される感覚だ。
日常の中にある「立ち止まる時間」の心地よさを、静かに思い出させてくれる作品である。
猫カフェ。そこはこの世とは少しだけ「理」の違った空間である。
主人公は人生で初めてその「異界」とも呼べる場所に足を運ぶことになる。猫というものの生態はよくわかっておらず、野良猫などは目を合わせただけでもすぐに逃げられてしまう。
触れるなんてもっての他。猫とは人を寄せ付けない類の存在だと思って生きてきた。
だが、「その場所」ではすべての理屈が「反転」してしまっていた。
媚びる! 懐く! 顧みる!
本当に、猫カフェで勤務している猫さんたちは、やっぱり「プロ」なのですか、と思いたくなるほどに人間の心を強烈に溶かしてくるものらしく。
どうすると人間が喜ぶか、人間が猫に望むものとは一体何なのか。それらを全て把握した上で行動してくださっているような甘々具合。
そうやってものの見事に猫カフェという異界の魔力に囚われてしまった主人公。
その後、彼女の運命は一体どうなってしまうのか。
「異界」というのは、現世とは少々変わったルールが存在する。そこに留まれば留まるほど、「消費されていくもの」も存在するという。
ホットでスウィートなその場の理に囚われてしまった彼女。彼女が再び外界に出る時、一体どのような変化が起きてしまったか。
「その結末」まで計算して行動しているとしたら、猫さんたち本当に凄すぎる!!!