第4話 サティの命運

やっと二十歳になったサティは平穏に見えたある日の午後、息を引き取った。サティの死を聞き、プロミスランドは緊急会議を開いた。オキと大臣に加え、ルルの兄ラステンも会議に参列した。なんだなんだとあまり訳がわかっていない大臣たちの前に一人の青年が腰のところに手を結ばれ、連れてこられた。

「こいつです。犯人。サティㆍトゥーナを殺したのはこいつです。自白しました。」と警備の物が青年を小突きながら、部屋の中心へと歩いてきた。

のそのそと歩く青年は拘束された手をジーッと見つめていた。

「おい。なんであいつを殺した」と財政大臣が尋ねた。すると、青年は

「だって、みんなやる気だったじゃねーか。誰もあいつが捕まってること知らねーし。おれが殺してやったら、みんな喜ぶんじゃねーかなってよ。門番の俺しかやる人いねーしさ、俺、敵殺したんだぜ?なんで拘束されてんだ?おれ。英雄じゃねーのかよ。」と不服そうに言った。


青年の言葉を聞いて、誰もが言葉に詰まった。たしかに、青年のいうとおり、サティはそもそも敵国の使者であり、軍を仕向けた後に使者を送れば殺されることは見込みながら送っているはずだ。ただ、サティがあまりにも優雅に、物腰柔らかく使者としての務めを果たしたため、大臣もオキも、誰もサティ本人に対し悪い意識をもってはいなかったのだ。


「これはもう。戦争だ。。」とラステンがボソッと言った。皆が顔をあげた。オキは、深いため息をつき、

「始まってしまったものはしようがない。皆、戦う準備を即刻はじめよ。サティが知らせたダグラスの思惑をプロミスランド中に知らせよ。志願兵の募集をさらに行え。ユートピアに知られるまでにどれ程準備を進めるかが勝敗を決めるのだ。動けっ!!」とカツをいれた。


門番であった青年はイキイキとした顔をしながら、解放されるのを待っていた。その彼をオキはジッとにらみ、

「牢にほりこんでおけ。サティの牢にな。」と言った。蹴られながら牢に向かう青年は、

「えええ。なんでだよぉ。おれ英雄だろぉ?」と言い続け、人を殺したと言う感覚をもっているようには見えなかった。


事態はプロミスランドの事態だけではなかった。事件の概要がサマルディ家にも悲劇を生む。サティの襲撃が知らされた瞬間、ラウは迷わずサティを治療している保健室に全力疾走で向かった。

「やめて!やめて!まって、まって、」と叫びながらラウは宮中を駆け抜けた。ラウがサティの元についた頃にはサティはもう虫の息だった。槍で貫かれたサティはラウを待っていたようにして息を引き取った。サティを抱き寄せ叫び回るラウを、姉を追って走ってきたルルはその錯乱度合いに圧倒され、ただみているしかでかなかった。オキが会議を終え、様子をみに来た時には、数時間泣き叫んだラウはサティの手を握り泣きつかれ、ただ呆然として座り込んでいた。ルルは姉をただただずっと見ていた。


オキはラウの様子を見るとパシッとラウの頬をひっぱたいた。驚いたルルはオキとラウの間に入ろうとしたが、オキはルルをはねのけた。

「何をしているんだ!サティを好んでいたのか!こいつは使者だ!こいつはこうなるだろうことをわかって、ここに来たんだ!何をうなだれているんだ!戦争だぞ!わかっているのか!こいつの死が戦争の狼煙になったんだ!」と怒鳴り、部屋を後にした。ルルは、姉のそんな姿も父のこんな剣幕も見たことがなかったため、事態を受け止めきれずにいた。しかし、慣れ親しんだサティが動かなくなっているのをみて、それに心が壊れた姉をみて涙が止まらなくなっていた。


サティは静かに宮の外に埋められた。墓石もなく、家族から遠く離れた地に埋められた。プロミスランド中が戦争の準備に大騒ぎになっていた。そんななか、ラウは毎日毎日サティの墓に通った。サティが埋められている場所の横に寝そべりずっと空を見ていた。墓はプロミスランド外壁の外にあるため、防護服なしでは汚染にさらされるのだが、ラウは寝間着一つで毎日そこで一日を過ごした。食事もとらず、寝ているのかもあまりルルにはわからなかった。ルルは日に日に弱る姉を心配し、好物の桃の揚げパンを用意したり、防護服を用意したりとユウと共に世話をしたが、ラウは一切を無視していた。4日たつと、ラウは衰弱しきり、歩く体力ももうなかった。ルルはラウに怒りを覚えはじめ、無理にご飯を食べさせようとした。すると、ラウはせきをきったように泣き喚き始めた。


「だから言ったのよ!なんでサティは死んだの!サティは私のものだったのよ!誰がサティを奪っていいといったのよ!あげないわよ!神にだってあげないわよ!サティもサティよ!なんで来たの!なんで、、」

すると、ユウがゴソゴソっとタンスの中から紙切れのようなものを出してきた。

「オキ様には、捨てるように言われたのですが。ラウ様には知る権利があるとユウは思います。誰も中に何が書いてあるのか知りませんが、サティ様がご生前の時に私めにお預けなさったものです。」と言い、紙を差し出した。

「私のラウ。ユートピアは、もうかつてのような場所ではありません。ダグラス様は重臣と民意に翻弄され、もはや誰にも止めることができません。ユートピアはプロミスランドの地下に眠る戦争の遺産、ユラノス爆発装置を持ち出そうとしています。私のラウ。あなたの愛するプロミスランドを私も愛しています。私は何が正しく、何が間違っているのかわかりません。ただ、貴方に一目会いたい。貴方との未来ははじめから望めないものでした。どうせ戦争で死が待つのなら、敵として死ぬのなら、貴方に会いたい。貴方と最後を過ごしたいと、そう思い、使者に志願しました。貴方はきっと私を怒り、罵るでしょう。でも私はそれでも貴方といれた最後は幸せであったと覚えておいてください。愛するラウへ サティより」

ラウは手紙を読み終えると、手紙を胸にあて、大声を上げて、心を口から出しているかのように泣いた。


同時に会議室では戦争の戦略が練られていた。ラウの心を他所に、オキとラステンはユートピアとの圧倒的人数差をいかに埋めるかについて暑く議論をしていた。

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