厳しい社会の中でじんわりとした温かさと、内に秘めた強さを感じられる作品です。
職務経歴書の空白や余白があると、私たちはまず何を思い浮かべるのでしょうか。他にも、いわゆるFラン大学出身だったり、留年していたり。
怠慢。甘え。実のところ、あまりいいイメージは湧かないことと思います。
繰り広げられる展開は、ごく普通の就職面接の光景です。前の人が会場を後にするのを見送る場面から始まります。次は自分の番。これだけで緊張が伝わってきました。
いざ、面接開始。主人公の矢代佳恋はすらすらと答えます。順調かと思いましたが、とある面接官の問いかけで空気が一変します。
表面で問いかけ、表面で答える。お互いにどれだけ頑張っても、見えているものはほんの一部です。就活生は社会の厳しさや大人の正しさに傷つき、自分を守るための術を身に着けます。その方法が、たとえ“嘘”であったとしても仕方のないことだと思います。
すべては、働きたい場所で働く権利を得るために。働きたい場所を自分の力で選ぶために。
――居たい場所に居続けるために。
台詞のほとんどが、用意された回答や当たり障りのない社交辞令のようにも見えます。しかし、矢代の胸中や仕草に大事な本音が潜んでいると感じました。
日々の喧騒の中でほっと一息つき、空を見上げたくなるような、静かな優しさを残してくれるお話です!