人になりたいと願う妖精が、人を幸せにすることでその夢に近づくこの素朴な動機づけが、ビリケンという馴染みのキャラクターに新しい生命を吹き込んでいる。
本町のビジネス街から新今宮の串カツ屋、田舎の畦道、梅田の産婦人科病院まで、舞台を変えながら様々な人生の断面に寄り添っていく構成は短編連作のようでありながら、最後にすべてが一つに繋がっていく仕掛けが心地よい。「立ち止まった人の背中をちょっと押すだけ」というビリケンの距離感が絶妙で、救うのではなく寄り添うという姿勢に、安易な感動を狙わない誠実さを感じる。
全8話・8千字弱という短さで読み切れるのに、エピローグの余韻は長く残る。大阪という土地の温度と、人になりたいと願う者の切なさが溶け合った、優しいファンタジーだ。
ビリケンさん。
大阪の通天閣にある「彼」が有名です。
一般的に「福の神」とされていますが、私は「彼」を思うたび、その見た目から自身の身体がフッ…と中空に浮ぶような奇妙な感覚にとらわれていました。
どうも日本における「ビリケンさん」は「大黒天」及び「恵比寿様」と同様に思われているようなのです。
「オオクニヌシ」でもある「大黒天」はともかく、「スクナヒコナ」若しくは「ヒルコ」でもあるらしいと言う「恵比寿様」と同一の存在…
しかし「ビリケンさん」は人に興味を持ち、人になりたいと思い、人を救おうと頑張る。
そんな「彼」がすこし哀しくも愛おしい。
このビリケンさんのこれからを追っていきたいと思います。