ほしわた氏の短編群をすべて読んできた目で見ると、この大正ロマンス連作が「もちゃぷきん」的な家族の温かさと「その川に、春の低音は」的な静かな恋愛をひとつの物語に溶かしたものだと分かる。
真白のキャラクターが読んでいて楽しい。「愛を求めない」と決めながら、台所でお春さんに愚痴を言い、銀座の喫茶店でラムネを煽り、石像の夫への意地から判じ絵で夕食の暗号を送りつける——その天真爛漫さと必死の自衛の共存が愛らしい。
「……そうか。明日はおでんか」という恒一の一言が第1話のオチとして完璧だ。この人は最初から全部見えていた、という読み返し欲が生まれる。樟脳の香り、椿油の小瓶、灰をならす音、ラムネのビー玉——大正という時代の質感が五感で積み上げられていて、NHKドラマを見ているようだという既存レビューの評が言い得て妙だ。
石像が崩れ始めるまでのじれったさと、崩れた瞬間の温かさを17話で丁寧に描いた、ほしわた氏の全作品の中で最も読者を選ばない一作。完結済み17話・2万6千字。
時は大正。
主人公は、お見合い結婚により愛もない旦那のともへ嫁いだ女性。
彼女はさして自分に一切興味のないそぶりをする石像のような夫に、毎日ストレスが溜まっていた。
愛なんてないのはわかってはいた、でも、夫婦となったからには。
そんな矛盾した感情が彼女の心を燻りつつけていた。
そんなある日、結婚して2年が経とうとしていた日に、石像だと思っていた夫から初めて謝罪をされる。
「これまで、寂しい思いをさせてすまなかった」
そこから、彼女はこれまでの夫婦生活の出来事を振り返ってゆく。
おっちょこちょいながらも愛される主人公。
読んでいると段々と人の良さが滲み出てくるおっと。
2人を囲む個性豊かな人たち。
読んでいるとどこか笑える夫婦の記憶です。
ぜひ、読んでみてください!