第23話 突撃
最後にレイが合流し、四人は湖に向かって移動を始めた。
「植物型?」
「上から見た僕の印象だから違うかもしれないけどね、上からは口に見える器官が目立っていたところをクルスに報告して分析してもらったら高確率でそうだろうという話さ」
移動中にレイと情報共有をして作戦を考える。
「植物型前提であるのなら、最初に私が呪術の火と風で枝葉、蔦、根を処理をして……」
「僕が魔術で反撃を撃ち落とす」
「その間に俺が近づいてぶった切ればいいと」
「可能ならレイの後ろにミルコが続いて瘴気を奪うが入る……他のデーモンならもう少し作戦は変わるがこの基本形で行けるはずさ」
レイとクルスとリーンの三人が集まると先ほどのクルスの焦りは嘘のように消えて、冷静に情報を確認して作戦立案を行っている。
立案、とは言っても恐らくは基本形としていた形は三人が冒険者時代に確立していたもので今でもそれが三人で戦う時のベースとなっているのだろう。
「さて、この高草を抜ければ湖でデーモンまで遮るものは何もない」
「ここまで見事なまでに魔物が居なかったのはやっぱりデーモンに食われたか……レイ、攻撃は絶対食らわないように」
「わかっている、ドラゴンの噛み砕きと同じと考えて対処する」
普通ドラゴンの噛み砕きの威力は知らないものである。
それを差も当然のように語るのは相応に実力がある証拠なのだろう、レイの声色も表情もいつも通りのものでその様子はミルコを安心させる。
クルスが草から顔を出しデーモンの姿を確認。
「植物型は確定……情報修正でミニオン有り」
「ミニオンの一掃はできそうか?」
「広がりすぎているから初手で飛ばせるのはレイが突っ込むための道だけだね」
「僕の方で周辺掃討を担当するよ、その代わり反撃対応は弱くなるから注意してくれ」
三人同士の信頼関係からくる即興レベルの作戦変更もスムーズに進んでいる。
「俺が反撃対応に回るのは?」
「規模が凄いだろうしミニオンが突撃してくる、金属盾で止められるのはそう多くはないから厳しいとは思うけど」
「……いや任せよう、クルス、ミルコに安全を預けて大丈夫か?」
「弟子の成長は嬉しいと言うのは相場だからね、それを実感するにはちょうどいい機会と言える……ミルコ任せていいかい?」
「やってみる!やってみせる!」
ミルコの覚悟をレイとクルスが承認する形で作戦は決定、乗り気じゃなかったリーンも二人が決めたことであるとそれを尊重して決定に従う。
「時間をかければミニオンが増える、行くぞ!クルス頼んだ!」
レイの号令にクルスは大気の力に働きかける形で炎の渦の道を作り出したのを確認してからレイとリーンが高草から湖畔へと飛び出しデーモンへと向けて走りだす。
炎の渦を避けて突撃してくるミニオンを確認したリーンは以前から研究していた瘴気を純粋なエネルギーとして利用し、そのエネルギーの塊を雨のように降らす魔術を展開してミニオンが近寄れない状況を作り出す。
そして球根のような身体を持ち頭部が全て口となっているデーモンが初手で処理できなかった蔦から、レイとクルスに向かい棘を飛ばしてきた。
「クルス!」
ミルコはクルスの前に出てカイトシールドを構え、棘を受け止めるが重い衝撃に対して体勢を維持するので精一杯になり動けなくなる。
対してレイは避けられない棘のみナイフで切り払い殆どは狙いを誘導する形で回避、足を止めることなくデーモンへと近づき続けている。
レイの本気の動きを見たミルコは模擬戦で手加減されていたことを改めて実感する。
「ミルコ、今は余計なこと考えない!」
クルスの叫びに今は余裕がなかったことを思いだしたその瞬間、棘を受け損ねたミルコは腹を貫かれた。
しかしミルコは痛みこそ感じたものの身体は問題なく動き後続の棘は全て受け止めきった。
「余裕はない!レイ決めろ!」
「応!」
デーモンのもとにたどり着いたレイは斧を全力で握りこみ、デーモンを地面ごとかちあげた。
かちあげられたデーモンは地面の中にあった根も全て掘り起こされる形となり根が伸びているその中心部に光を放つ器官が姿を現す。
「そこが弱点だろう!貫け!」
「
司令塔であるクルスの号令にリーンがエネルギーの槍を飛ばしデーモンの弱点である器官に突き刺さるも完全破壊までは届かなかった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ」
低い唸りのような咆哮をしながらレイはかちあげて頭上まで持ち上がった斧をリーンが傷をつけたポイントへ正確に振り下ろす。
デーモンの弱点はレイの攻撃で完全破壊され、デーモンが溜め込んでいた瘴気が周囲に撒き散らされる。
「レイ!離れろ!」
クルスの叫びに返事はない。
撒き散らされる瘴気に対し、ミルコは腹に空いた穴から取り込んでいく。
身体の中から自らが持つ本来の力よりも遥かに大きい力が強制的に流れ込み意識が飛びそうになるも痛みがなくなっていることに気づき、無意識にデーモンの居た場所……レイの居た場所へと走りだしていた。
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