冬の夜橙の三日月の下で椿の花に衝動的に噛みつく主人公──その異様な光景から〝花吐き病〟と〝花喰い病〟という二つの病と人の恋情・業が静かに立ち上がってくる平凡な会社員と幼馴染の女医との会話もどこか翳りを帯び現代医療と民間伝承のあわいで揺れる不気味さがじわじわと沁みる神話の引用が物語に重みと余韻を与え花の美とグロテスクさが同居する静かな恐怖譚──読み終えた後も街路樹の蕾を見るたび、喉の奥がひやりとし花粉の匂いにさえ胸のざわめきを覚えるよう⋯⋯