この作品は、と或るミステリ作家の
作品へのオマージュというが、この作家を
よく知っている。ミステリの手腕同様に
物語全体の空気を創るのに長けている。
…さて、作品のはなし。
日々の暮らしに嫌気が差して、何をしても
気鬱に塗れるのならと、ひとり夜行列車に
乗って海辺の町を目指す主人公。
車中にて見目麗しい一人の男に出会う。
彼には四つ歳の離れた美しい兄がいたと
言うのだが、兄は自らのドッペルゲンガー
(二重身)に魅了されていた。
ドッペルゲンガーは死の予兆、不吉の影と
恐れられているものだ。
彼は愛する兄の身を案じ、それは
予想もつかなかった出来事へと…。
江戸川乱歩の名作【挿絵と旅する男】の
本歌取りという。
だがしかし、これは【美しき兄】そして
【笑う死美人】へのオマージュでは
ないだろうか。
それは恰も、合わせ鏡の如く。
斯くも不穏で美しく退廃的な夢の連続を
見た事はない。
その、作家の名は鏡の中に。