第一章:平原の狂える王
準備期間
などと、繊細な時期もあったりしました。
……最初の日だけ。
いや、我ながらビックリだ。意外と太い神経してたんだな……って。
ひょっとしたら体が本物の神子になったので、精神も引っ張られたのかもしれないけれど。……もしそうなのだとしたら、戦闘の時もなんとかしてほしかったけどね!
翌朝なんかはもう、全く動く気力がなくて、ただただぼーっとベッドで過ごしていたのだけれども。
それでも……空腹はやってくるわけでして。
無視してごろごろと寝返りを打っているうちにやがて我慢できなくなって、昨日採取した木の実を口にしたら。
「……おいしい……」
木の実から溢れる汁がわたしの乾いた心を満たした……というよりは単に空腹が満たされて落ち着いたからだろうね。
戦闘行動をするとSPが減るのに回復させなかったせいで、頭が回らなかったのだろう。
元の世界にはもちろん未練がある。
廃ゲーマーに近い行動を取っていたけど、普通に家族も友達も居た。……恋人は居なかったけどさ。
大学生活を漫然と送って、どういう社会人になろうか明確なビジョンは持っていなかったけど、悲観もしていなかった。
続きが気になるマンガやアニメだってたくさんあった。
……可能であれば、今すぐ帰りたい。
けれどそれはできなくて。
どうすればいいかなぁとあれこれ考えていたら、天啓のように閃いた。
創造神は「帰れない」と言っていたけど、ここまでわたしを連れてきたのだから、帰すことだってできるかもしれないじゃない?
今は力を失っているのだから無理なだけであって、力を取り戻してもらえばいけるかもしれないじゃない?
つまり……この世界を救ってしまえばいいんじゃない?
などという前向きな――そう思わなければやってられない――思考展開を経て、わたしは復活を果たしたのであった。
……もちろん本当に帰れない可能性だってあるんだけど、だとしたらなおさら「きちんとこの世界で生きていかねばならない」。
わたしは死にたくないのだ。
ということで、まずは拠点を充実させることにした。
夜にさえ行動しなければ(+聖水を撒き忘れなければ)ひとまずはなんとかなるので、第一に食料の安定供給を目指す。空腹だとろくなこと考えられないしね!
木の実と魚はそこそこ手に入れられるしSPも十分回復するけど、それだけでは物足りない。美味しい食べ物は心の癒しなのです。
林に入って兎狩り……は弓が出来るまでは上手くいきませんでした。素早いんだもの。鹿や猪もいたけど、ナイフしかない段階では手を出すのはやめておいた。動物はこちらからなにもしなければ
そして一番の目的であった牛と鶏を発見して捕獲。飼育することで一日一回だけど卵と牛乳が得られるようになった。料理レパートリーがぐっと広がった。
岩塩も見つかったけれど無限ではないので、近いうちに海を目指したいところである。
平行して畑を作成して、林や草原で入手した種や苗を植えていった。これで小麦やさまざまな野菜が手に入ることになる。いずれは果樹も植えて果物も安定供給させたいな。
なお、肥料の入手……トイレの自動化に関しては初日に倒したコボルトの魔石で真っ先にやっておいた。
第二に生活環境を整えることにした。
食材があっても施設がなくては良い料理は作れないので、かまどを設置した。
鍋とかフライパンとかも作成したいのだけれども……残念ながら金属はまだ手に入っていない。木串を刺して焼くか、土鍋を使って煮込むか蒸すくらいしかしていない。なお、米はまだ未入手。
綿を発見したので栽培して増やし、草藁ベッドから卒業ができた。快適な睡眠も大事大事。
まだあまり大量に入手できてないから進んではいないけど、裁縫スキルレベルを上げて衣服の質も上げていきたい。
また、綿から糸を作成したことで木の枝と組み合わせて弓が作成できた。動物が狩れるようになって皮を入手できるようになった。皮はぎのやり方なんて知らなかったけど、そこはスキルで補完してくれたのかパッとアイテム化してくれたのは助かった。……まぁ、血も内臓も見ることにはなるんだけど、初日のモンスターのアレよりはマシだったからね……。
アイテム作成のための生産設備を増やすのは?って?
……まだできないんですよ、これが。
革装備の作成や傷薬の調合は作業台で事足りるレベルだし、鍛冶や錬金を始めるには素材が足りない。
今は素材を集めながら、各種スキルレベルを上げるしかないのです……うぅ。
そうこうして色々やっている間に、結局は直面することになる。
……アイテム作成には魔石が必要になってくるわけでして、どうしてもモンスターと戦う必要が出てくるのだ。
十分な(初日に手酷い目にあったせいで、革装備で十分なのにそれより上、過剰なものを求めてしまっていた)装備を整えられないわたしはまず、簡易トラップを作成することにした。
それは落とし穴。
ハハ、こちとら神子である。土をざっくざく掘ることなんて朝飯前さー、と拠点の周囲に深さ二メートルほどの穴を掘って、先を尖らせた木の杭を埋め込んで壊れやすい板と草をかぶせた。
ただの落とし穴であるが、頭の良くないゴブリン、コボルト相手には効果覿面。たとえ木の杭で倒しきれなかったとしても、石槍で落とし穴の上から突けばいいのだ。そして朝になったら魔石を始めとする素材を回収するのである。素材部分以外は朝になってしばらくすると消えるので掃除する必要はないけど、しばらくグロ画像を見ることになるのはどうしようもない。
ハハ……おかげで色々と慣れてきて、数日もすれば落ち着いて直接戦闘もできるようになりましたよ……どのみちこれができなければヤバいしね。
魔石の入手数が増えてきたことで、聖水散布の自動化を行った。ゲームと違って命がかかっているのだし、本当なら聖水よりランクの高いアイテムにしたいのだけれども、それを作成できるようになるのはまだまだ先だ。
仕組みとしては単純。拠点の周りに堀を作成、魔石で川から水を引き込み、水流を作成し、日照センサーと組み合わせて夜になったら聖水を混ぜるようにしただけである。
これでわたしが常駐していなくても拠点の防衛ができるようになった。
あと、毎日創造神の像に祈ったことで、転移アイテムである【帰還石】が作成できるようになった。
これは使用することでその石を作成をした創造神の像の元へ一瞬で帰れるという、使い捨てだけど非常に便利なアイテムである。
なお、一か所につき一つずつしか作成できないので結構貴重だ。帰るたびに補充すればいいのだけど、わたしってばうっかり忘れかねない……重々気を付けよう。
モンスターの爪や牙でナイフを作成し。革ではあるがしっかりと装備を用意し。傷薬や食料を十分にアイテムボックスにストックして。帰還石もできあがって。
わたしがアステリアにやってきて一月ほど経ったころ。
旅に、出ることにした。
ずっとここで暮らしていては、世界に『創造の力』を満たすことはできない。
モノ作りをすることで創造の力は自動的に振り撒かれるのだけれども、大したものが作れないまま時間を掛けていてはこの地域ですら破壊の力に飲まれてしまうかもしれない。
どうしたって新しい素材が必要になってくるし……それになにより。
人恋しいのである……!
いやもう、創造神はいくら祈ってもあれ以来なんの反応もくれないし!
牛さんと鶏さんはいるけど話し相手になるわけないし!
わたしに近寄ろうとするのはモンスターだけだし!!
アイテム作りは楽しいけど、こんな生活を続けていると心が荒むわ!!
ということで、アイテム、特に帰還石ができて、危険な時はすぐに逃げる手段を確保できたところで、住人を探しに行くのだ……!
「やるぞー!!」
ぐっと拳を握り、天へと振り上げるわたしであった。
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