姉はハルカ。弟はカナタ。
「ハルカカナタ」のタイトル通り、二人にとっての“安心できる暮らし”は手が届くとは思われないほど、遥か彼方にあった。
幸せな家族の中で過ごした時期もあったが、両親の離婚を機にそれは終わりを告げる。
母の再婚相手は、姉弟に暴力を振るい、母は二人を守ってはくれなかった。
二人は“大人”に恐怖を感じ怯えるようになってしまう。
幼少期の大人、特に家族の中に居る大人は、子どもにとっての世界を支配する存在といっていい。
その時触れた恐怖も優しさも、全て子どもの中に蓄積されていく。
二人が里親の岡田さんの後悔と優しさを知った時、自分たちの人生が再び優しく穏やかに温められるのを感じることができたかもしれない。
「ハルカカナタ」だと思われた温かい家族に、手が届いただろうか。
二人もやがて、大人になっていく。
彼らが誰かを温められる大人になることを、願わずにはいられない。
「優しさ」という言葉がとんかく胸に沁みる作品でした。
ハルカとカナタ。幼い二人は穏やかにツクシやタンポポを見るなどして過ごしていた。そんな幸せな時間もありはしたが、母が「新しいお父さん」を連れてくると日常が一変してしまう。
理不尽な暴力にさらされ、二人は児童養護施設に逃げ込むことに。それからも大人というものが怖くて二人だけで行動することが増えていた。
でも、そんな時間に変化が訪れる。二人にとって大人は怖いもので、やはり怖い大人は怖い。
けれど、みんながみんな、そんな人間ばかりではない。
二人の中で唯一のあたたかい思い出となっている「タンポポの卵とじ」。母が作ってくれたその料理が、一体どういう経緯を持つものだったのか。
「あたたかさ」というものを知り、二人がしっかりと辛い思い出を「過去」にすることが出来た瞬間が描かれる。
そんな優しさや幸福感が描き出された素敵な一作です。